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人、モノ、情報をリンクし
地域経済の発展に寄与

■独自のチケット管理システムを安価に提供
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大嶋 憲通氏
株式会社リンクステーション
代表取締役社長
1969年、東北町生まれ。明治大学政治経済学部卒業。91年、株式会社富士通青森システムエンジニアリング入社。2003年、会社設立。05年、社名を「株式会社リンクステーション」とする。10年、セブン-イレブンジャパンと業務提携。12年、青森市文化会館のネーミングライツ(命名権)取得。ぴあ株式会社と業務提携。

----御社の事業について概要を教えてください。

 現在の当社の主力ビジネスは、独自に開発した「Gettii(ゲッティ)」というチケット販売管理システムの賃貸で、全国1200以上のホールや芸能プロダクションなどにご利用いただいています。従来のチケット販売方法と大きく異なるのは、イベントの主催者がチケットを購入したお客さんの情報をストックでき、次のマーケティングに活かすことができることです。主催者がプレイガイドにチケット販売を委託するという従来の流れでは、お客さんの情報がプレイガイドで止まってしまい、主催者には残りません。主催者は、次の催事を行うとき、また一から売らなければならないわけですが、主催者が自社のホームページを使って自分たちで販売を行えば、購入者のデータを手元に残すことができます。従来のこうしたシステムを導入するには、高額なソフトを購入して自社のパソコンにインストールする必要がありましたが、「Gettii」はソフト自体はリンクステーションのサーバーにあり、主催者は、リースあるいはレンタルの形でこのソフトを使い、使った分だけの使用料を払うことになります。ですから、導入費用が抑えられますし、また保守費用や専用の管理者を置く必要がないという利点もあります。

 具体的には、チケットを買いたい人は、主催者のホームページからリンクする「Gettii」にアクセスし、クレジットカード決済で予約購入します。発券は全国に約15,000あるセブン-イレブンの店舗で行っていますので、24時間いつでもチケットの予約と受け取りができます。主催者、チケット購入者双方の利便性を高めた仕組みといえます。  また当社では、アフターズという部署を設け、全国のクライアントを回って、操作の説明や、要望の聞き取りを行い、必要なものは改善するというサービスにも力を入れています。とかくITというと無機質なイメージがありますが、導入してもらったら終わりではなく、常にユーザーと接点を持ち、サポートし、それを次のシステム開発にも役立てている点も「Gettii」の特徴といえるでしょう。

----創業のきっかけ、チケット販売システムを手がけるまでの経緯などを教えてください。

 大学卒業時はとにかく青森に帰ることだけを決めていました。富士通青森システムエンジニアリングに就職し11年ほど勤務しましたが、その間、インターネットビジネスが台頭してきて、モノの販売も広告も、すべてがネット上に移行し始めましたので、「今、そこに入っていかないと乗り遅れる」という意識で、友人と二人で起業しました。

 当初、ホテルの予約システムなどを作っていましたが、東京・足立区のホールのチケット販売システムを手掛けたことがきっかけで、興業の大手であるホリプロさんと知り合うことができました。当時、ホリプロも同様のシステムを作ろうとしていたのですが、要望を反映したシステムがなかなかできなかったらしく、「こんなことができるか」と、うちに声をかけてくれたのです。要望というのは、細かな機能のこともありますが、一番は、もっと安くできないか、ということだったのです。私はもともと、今で言う「クラウド」のようなことをやれば安価にシステムを提供できるという発想をもっていましたので、ソフトをレンタルで使ってもらう「ASP」という方式を提案しました。これがGettii開発の始まりです。

 ホリプロという興業側の最大手に導入してもらったことで、Gettiiは新国立劇場や東急文化村といったホール側の大手にも利用してもらえるようになり、そこから口コミで全国のホールや興業主などに広がっていきました。

■青森を拠点にする意味とメリット

----全国的な大手企業と業務提携し、また全国にクライアントをもつIT企業として、青森に本社を置くことにデメリットを感じたことはありませんか。

 当社は青森の経済に貢献することを第一の理念としていますので、本社をここに置き、ここに税金を入れることは基本です。一つだけ不利だと感じることは、日常的に、IT産業の最先端にいる人や大手の企業と交流する機会がないこと。この仕事は、そうした交流の中で、今考えていることや悩んでいることをざっくばらんに話し、会話の中からアイディアやヒントを見つけて、自分のスキルアップにつなげていくということが非常に大切なのですが、東京では日常的にあるそうした機会がないことは、私も、また社員にとっても残念です。

 ただ反対にメリットもあります。中央の最先端にいる人は、地方のIT環境がわからない。東京の感覚で「こんなことができます」と提案されても、地方の人はついていけないということがよくあります。ITのインフラ環境が違いますし、その地方独特の文化や考え方の違いもある。地方の感覚で、地方ならではのニーズに応えるものを、地方のIT環境に合わせて作るということは、青森にいるからこそできると思っています。

 現在、年間の自主公演が数本しかないような地方の小さなホール向けのチケット販売システムの開発を進めています。また10月には、ホール以外のイベント、例えば街コンや結婚式の二次会など、これまでチケット化されていなかった小さな催事をチケット化してお客様の情報を管理できるシステムをリリースしました。これらも、青森にいるから出てきたアイディアです。地方向けのシステムは、まず青森でやってみて、改良すべき点は改良し、軌道にのったら全国に展開していこうという姿勢で進めています。

----雇用面でも青森に大きく貢献されていますが、人材確保という点ではいかがですか。

 当社の社員はほとんどが中途採用で、全て青森県出身ですが、スキルをもった人を集めるという意味ではそれほど難しくありません。ただ、毎日、新しいサービス、他にないサービスを求められる業種ですから、常に情報を収集し、そこからビジネスに結びつくアイディアを出して、具体的なシステムを構築していくという能力を育てるのは、なかなか難しいですね。青森県人はどうもネガティブな人が多い。できない理由ばかり並べるんですね。何をやるにしても必ずハードルはあります。どういう障害があるかわかっているなら、それを解決する方法を考えるべきです。私がホリプロさんから「もっと安くこういうことができないか」と言われたとき、「それは無理です」と言っていたら今のリンクステーションはないわけですから。

 それから、ディスカッションしてよりよい結論を導き出すことも苦手な人が多いですね。組織で何かをやるときに、自分の意見が言えない。恥ずかしがりなのでしょうが、私は、それは「プロ意識が足りない」ということではないかと思っています。

 社員には、人はなぜ働くのかという話をよくしますが、私は、世の中に自分の価値を提供するためだと考えています。誰もが持っている自分のよい所、優れた能力を、会社というツールを使って世の中に提供していく。もちろん生活のためということもありますが、自分が豊かになるために、社会を豊かにできる何かを提供する、それが働く意味であり、プロであるということだと思います。私も、社長になり、さまざまな人と話をして、そういう考えに至りましたが、時間はかかっても、この意識を社員と共有していきたいと思います。

■県内での事業展開に向けて

----県内での事業展開に向けて

 チケットの販売システムについては、昨年、不正アクセスで当社のシステムが停止し、多くの方にご迷惑をおかけしましたが、原因も解明し、万全のセキュリティ対策を講じ、その後問題なく稼働しています。「チケットぴあ」さんと提携しましたので、その力も借りながら主力事業として継続していきますが、私自身は、今後は青森県内の事業に注力していきたいと思っています。具体的なことはまだ申し上げられませんが、青森のさまざまな業種をリンクさせることで、それぞれの企業がより商売をしやすく、売上げを伸ばすのに役立つシステムを立ち上げていきたいと思っています。当社の社名には、「人」、「モノ」、「情報」をリンクするステーションとなることで青森に貢献していきたいという思いを込めていますが、その具体化の第一歩ですね。

 青森市文化会館の命名権を取得したのも、新事業のための種まきといえます。県内で事業を展開するためには、社名を知ってもらっているほうがいいですから。また、リンクステーションを広く知ってもらうことで、例えば県内の高校生が、東京に行かなくてもここに入ればこういう仕事ができるんだとか、あるいは自分も起業してみようというふうに思ってくれたらうれしいですね。IT産業というのは、県外、国外から、青森にお金を持ってきて落とせる業種ですから、もっと県内にIT企業が増えて欲しい。今まで、起業家が出てこなかったのは、身近に目標となる人や企業がなかったからだと思います。そういう前例をつくるという意味でも地域に貢献していきたいですね。