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開かれた研修で
地域の発展を支援

■多くの役割を担う研修施設
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大塔 容弘氏
株式会社青森原燃テクノロジーセンター
代表取締役社長
1943年、満州国大連市生まれ。その後、神奈川県小田原市に引き上げ。東京工業大学修士課程修了。69年、(財)電力中央研究所入所。81年、日本原燃サービス株式会社(現日本原燃株式会社)入社。97年より同社六ヶ所再処理工場に勤務。取締役副工場長、核燃料取扱主任者などを務め09年6月に退任。同年7月より現職。

----地元では「テクセン」として親しまれている御社ですが、他地域の方に御社の事業内容について簡単にご説明ください。

 当社は、原子燃料サイクル事業の安全で安定した操業に向けて、日本原燃の社員や、メンテナンス業務などで原子燃料サイクル事業に携わる地元企業の皆さんのための研修の場として、また、原子力関連に限らず地元の方々を対象としたさまざまな公開講座を開講する「地域に開かれた研修施設」として、平成7年4月から東北町で事業を開始しました。いわば日本原燃の地域交流の一翼を担うグループ企業として拠点となる施設です。

 原子力関連技術研修は、国の予算で実施していますので受講は無料です。個人でも企業でも、また原子力分野の経験の多少にかかわらず参加いただけます。一方、公開講座については、企業向けのビジネスセミナー及び資格取得セミナーと、子ども・一般向けの趣味・教養講座の2つを柱として開講しています。

----公開講座の内容はどのように決定されたのでしょうか。

 事業開始に先立ち、六ヶ所村の隣接市町村の企画課長さんへのヒアリング、また県庁及び六ヶ所村隣接・隣隣接市町村(現12市町村)の職員を対象としたアンケート調査により、どんな講座が望まれているのか、ニーズ調査を実施しました。その結果、農業関連、エネルギー関連、教養・文化・娯楽関連、商業関連、それから小・中学生向けの実験講座などへの要望が多かったことから、これらを柱とした講座を、年度によって内容を変えながら継続して開講してきました。

 企業向けの講座では、ビジネスセミナーとして、新入社員から管理職までを対象とした階層別研修・ビジネススキルアップ研修等を幅広く開講しています。これは首都圏で開催されている講座と同じもので非常に充実した内容となっています。また資格取得のための研修も、わざわざ東京や仙台に行かなくもここで受けられますので、青森の企業の皆様に幅広く利用していただいています。

 また、これら公開講座の内容については、毎年度末に、12市町村への事業報告を行っていますが、その際に、次年度のテーマに向けたニーズをお聞きして、翌年の講座メニューの設定に反映させています。

----たいへん立派な施設ですが、研修のほかにどのような使われ方をしていますか。

 宿泊施設もあり、施設の貸し出しも行っていますので、当社主催の講座のほかに、民間企業の新入社員研修、会議など、さまざまなかたちで利用いただいています。また大・小の浴場やトレーニングルーム、広大な芝のグラウンドもありますので、県内外から、いろいろなスポーツの合宿等にも使われています。食堂のご飯がおいしいと評判ですが、施設を利用された方しか食べられませんので、ぜひ一度、利用してみてください。

----特に、子どもたちの科学への関心を促すような講座に積極的に取り組まれていますが、その目的や意義について教えてください。

 通常の子ども向け講座のほかに、年1回、クイズや実験ショー、工作・体験コーナーなどで構成する「サイエンスフェスティバル」を開催しています。いろいろな体験メニューを通して科学に親しんでいただくイベントですが、グランドにテントでブースをつくり、近隣のNPO法人や高校、高専などの皆さんにも出展いただいています。子どもたちからも、指導する出展者の皆さんからも好評で、青森市や八戸市の子どもたちも参加していますがリピーターも多いです。

 また春休みと夏休みには、「サイエンスキャンプ」というイベントも実施しています。春はここの宿泊施設に、夏はグランドに張ったテントで一泊してもらい、各回のテーマに沿った科学実験や、テーマへの理解を深める工作などにじっくり取り組んでもらっています。簡単なロボット作りなどを行っていますが、作ってみて、動かして、それに改良を加えていくという過程を通して、よりよいものができあがっていくことに子どもたちは大きな喜びを感じています。また、住んでいる所も学年も違う子たちが、いっしょにものづくりに取り組むことで、新しい仲間づくりの機会にもなっているようですね。

 日本は資源のない国なので、どうしても科学技術立国にならざるを得ません。ですから、将来を担う子どもたちに、小さい時から、自然や科学に親しんでもらうことはとても大切なことだと考えています。

■人材育成を通して地域に貢献

----日本原燃の地域交流の拠点として、具体的にどのような役割を果たしているのでしょうか。

 通常の講座では、この地域の基幹産業である農業の近代化に向けて少しでも役立てていただければとの思いから、農家の主婦向けの簿記講座や、中高年向けのパソコン講座なども実施しています。このほか、東北町のいろいろな行事で施設を利用していただいていますし、町教育委員会との共催で、教育関係の講演会や、町民大学といったものも開催しています。開催場所はここに限りませんが、これまで、教育評論家の尾木直樹さん、元バレーボール選手の三屋裕子さん、吉原知子さん、アーチェリーの山本博さん、「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんなど、さまざまな分野の著名人を講師に招いて、多くの町民の皆様に集まっていただきました。教育委員会の意向に応じて、講師の選定、スケジュールの調整などを行うわけですが、やはり名の通った人ほど多くの方が集まります。私どもはこうした著名人の講師派遣のルートをたくさんもっていますので、東北町に限らず、自治体や企業、団体にも活用していただきたいですね。

 また東北町は観光資源や特産品が豊かですから、そのPRにもいささかでも役立ちたいと思っています。2010年から、サイエンス関連のイベントとは別に、「自然 体験 グルメツアー」というイベントを年6回開催しています。これは、エダマメ、ジャガイモ、トウモロコシなどの植え付けや収穫などの農業体験、またそれらの食材を使った料理コンテストなどを通して、家族のコミュニケーションを深めてほしいとの狙いで実施しているものですが、県内一円から参加者を募りますので、他地区からの参加者に、東北町や上北地方の食の魅力を知っていただく機会にもなっていると思います。また、小川原湖のシジミとり体験や、酪農農家での乳搾りやバター作り、周辺の温泉入浴もツアーに盛り込み、地元の魅力を広く体験していただいています。

----最後に、今後の事業展開への抱負などお聞かせください。

 現在、当社の社員は私を含めて10名ですが、7名が青森県内出身、うち4名は東北町の出身です。当社では、講師を斡旋するだけでなく、社員自身が講師を務められるよう、ライセンスの取得を奨励し、支援しています。

 顧客満足度向上のための枠組みとして、PDCAサイクルの活用ということが言われますが、P=Plan(計画)やD=Do(実行)まではできても、C=Check(点検・評価)とA=Act(処置・改善)ができていない場合が多い。自らが講師を務めることで、他の講座の講師をチェックする能力が育ちます。チェック能力があれば、例えばわかりにくい講義や、親切でない講師に対して、もっとこうしたほうがいい、という注文を出すことができます。そしてどうしても改善されなければ、講師を変えるというActを起こす場合もあります。より満足していただける講座を提供していくために、社員自身が講師資格を取得することは重要ですし、そうした能力をもつ人材が地域に育つこともまた、間接的な地域貢献の一環だと考えています。当社の事業を通して、また社員教育を通して、地域の将来を担う人材育成に寄与していきたいと思っています。