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下北の魅力を伝えることこそ
最大のPR

■青森県のメリットを当社のメリットととらえる
写真
菊池 俊明氏
有限会社下北名産センター
社長
1962年、むつ市生まれ。青森大学卒。むつ市内のスーパー勤務の後、85年、下北名産センター入社。 (社)下北物産協会専務理事、青森県観光誘致協議会副会長などを務める。

----合併で新むつ市が誕生してから7年になります。旧市に川内・大畑・脇野沢の各地区が一体化したことで、観光や物産、御社の事業にどのような影響がありましたか。

 当社は、団体旅行のツアーバスが立ち寄れる食堂と売店を兼ねた施設として、平成元(1989)年にオープンしました。市場がつくった店舗ですので、当初は仲買人さんとの競合を避ける意味もあり、地元へのPRは行わず、観光のお客様への対応に特化した店としてスタートしました。首都圏などの旅行会社への営業が主ですから、地域の観光振興とは切り離せない商売です。うちの店だけ宣伝すれば観光のお客様に来ていただけるということは絶対にありません。下北全体の観光をPRすることが、すなわち当社のPRなわけです。もともと恐山のことも、薬研温泉、川内渓流、脇野沢のタラのことも、下北の魅力として一体的にPRしてきましたが、観光の受け皿となる母体が大きれば大きいほどPRはしやすくなります。むつ市をPRすれば下北の大部分のPRができるわけですから。

 ただ、東京の旅行会社にツアーを組んでもらう上では、国内外の観光地がライバルですから、むつ市だけで対抗するのはナンセンスでしょう。下北全体、あるいは青森県全体を売り込まないと競争には勝てません。市町村単位での観光PRというのは、お客様の立場からすると何のメリットもありません。スーパーで言えば、売り場ごとに会計しなければならないようなもので手間がかかるだけ。民間レベルでは、以前から市町村の枠は関係なく下北全体でPRに取り組んでいます。私は仏ヶ浦の宣伝もしますし、大間のマグロの宣伝もする。佐井や大間の皆さんと一緒に営業に行くのは普通のことです。

----東北新幹線の全線開業から1年以上がたちました。その効果と、2012年に向けた期待や抱負をお願いします。

 青森県全体を売り込むという意味では、新幹線の効果は大きいですね。震災があり、たいへんな中でディスティネーションキャンペーンを実施してもらったのも本当にありがたかったです。東北新幹線がPRされるということは、間違いなく青森県にとってメリットなわけです。青森県にとってのメリットは、下北の、むつ市のメリットであり、そして当社のメリットである、と考えています。東京から新青森までは一気に来ていただけるわけですから、そこから下北に来てもらうためのPRをする。十和田湖を見た、ねぶたを見たお客様に、その先の青森、みちのくの奥の奥の下北にも足を延ばしていただけるよう努力することが大切だと思っています。

----下北各地区で特産品開発による観光振興や街おこしの取り組みがなされています。特産品を販売する立場から、こうした取り組みをどのように見ていますか。

 例えば海峡サーモンは、食材として使っているレストランなどの評価は非常に高いです。さまざまな苦難を越えて、質を落とさずに着実に生産を続けているのは素晴らしいことだと思います。ただ、絶対量が少なくて手に入りにくいからでしょうか、地元でも知ってはいるけれど食べたことはないという人が多い。うちでも安定して店に出せてはいません。一球入魂かぼちゃにしても、奥戸のじゃがいもにしても、質の評価は定まりつつありますから、あとはいかに市場に安定的に出していけるかということではないでしょうか。

 下北の産品は良い物がいろいろありますが、そのブランド力を高め、それをキープするための方法というのは、ある程度共通していると思うんですね。大間のマグロという優れた先例があるわけですから、その点の勉強をしながら、販売する側として、ブランド化にできるだけ協力していきたいですね。

■変化する観光客の指向

----今後、下北の観光振興を進める上で、課題と思われることはありますか。

 最近はインターネットなどを利用してそれぞれの人が自分好みの旅を計画する時代になりました。有名な観光地を回って、うちのような専門の店に立ち寄るという団体ツアーは今後減っていくでしょう。お客様の旅行に対する価値観が変わり、受け入れ側の底辺も広がっています。

 下北には、さまざまなニーズに応える多彩な資源があるのですから、それをうまく発信していくことがより重要となると思います。消費者というか、お金を使うほうは、観光地や特産品について、本当によく勉強しています。こちらも勉強して、そうした問い合わせに対応できる体制を作らないと置いていかれます。現在、下北観光協議会が主体となって、いろいろな勉強会をやっているのですが、まずは官民が協力して、下北の情報を集約し発信できる観光プラットホームを整備することが必要だと思います。私自身、下北の観光について「どんなことでもいつでも問い合わせてください」というスタンスで日々やっていますが、もっと幅広い情報、ネットワークを持った人がたくさんいらっしゃいますから、そうした情報を一元的に発信できる機関があればいいと思います。

■ツアー対応専門店から、地元にも利用される店へ

----そうした観光のスタイルの変化に、御社としては具体的にどのように対応されていますか。

 当社としても、観光ニーズの変化に危機感をもち、対応を徐々に進めています。3年ほど前から、地場農産品の産直販売を始め、地元の皆様にも利用していただける店へと転換を図ってきました。もちろん従来の団体のお客様へのサービスを続けながら、地元の皆さんにも利用してもらえるお店へとシフトしていかなければならないと思っています。商品は包装された土産品風のものが多いですから、自家消費型ではないのですが、贈答用などに使っていただけるようになってきました。

 一方で、全国のお客様への販路拡大という意味で、インターネットでの通信販売に力を入れています。これから大きくなる分野だと思いますので、この春から、専従で通販を担当する会社を別に起こして営業しています。

----最後に、経営者として心掛けていること、信条などありましたら教えてください。

 前職のスーパーでいろいろな売り場の仕事を体験しましたが、すべて勉強になりました。魚屋は、魚をさばくなど、とにかくやれと言われたことをやれなければなりません。本屋は、他店と価格が同じですから、とにかくお客様が欲しいものを並べることが大事。欲しいものを揃えれば売れるのだということを学びました。ファストフード店では、接客と従業員への教育ですね。何にも知らないバイトの子たちにどう接客を身に付けさせるか。できないのは教えていないからであってリーダーの問題。若い子たちは教えればできるんですよ。

 ここでは、現場で働いている皆さんはベテランですから、私は基本的なルールを作るだけ。例えば、バスが着いた時はお客様が団体で入ってくるので、きちんと「いらっしゃいませ」が言えますが、個人のお客様が一人、二人で来られたときも変わらない対応をするというようなことです。お店に入ってくれた方は全部お客様。入ってくれた以上、通行人じゃないのだということは社員に徹底しています。

 また、ここの2階には600席の食堂がありますが、そちらを使っていただくときも同様です。なるべく楽しんでお食事していただくような接客や声掛けに努めています。食事は楽しく食べれば、おいしいんです。笑っていれば財布の紐もゆるむので、下の売店での買い物もしてもらえます。ですから、そうしたお客様との会話、声掛けを社員全員ができるように、ホスピタリティー面の指導は重視しています。給料をくれるのは社長でも会長でもなく、お客様です。その人たちが目の前にいるのですから、「ありがとうございます」という言葉をお掛けするのは当然だと思います。