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ここにしかないものを
つくりだす努力を

■青函トンネル工事期に開業
写真
杣谷 徹也氏
龍飛崎温泉 ホテル竜飛
常務取締役支配人
1975年、旧三厩村生まれ。青森大学卒。 仙台市、花巻市でホテル勤務の後、東京の旅行関係企業でツアーの企画等を手がける。 2001年より現職。ホテル竜飛を経営する三厩観光開発株式会社の常務取締役を兼任。

----ホテル竜飛の沿革について簡単に教えてください。

 もともと私の祖父が昭和43年に創業しました。初めは6ルームからスタートしたそうです。その後ホテルとなり、昨年の4月に部屋数を39から50に増やしてリニューアルしました。

 当初は、青函トンネル工事関係の方の利用が多く、泊まれば1年連泊という人もいました。そうなると家族みたいになっちゃうんですね。祖父も父も、お客様と一緒に晩酌したり。私もそういう環境で育ちましたので、お客様の部屋に遊びに行ったり、時には、「ジュースあげるから、この辺を案内して」って頼まれたり。ですから、知らず知らずのうちに、人をもてなす心といいますか、来た人に喜んでもらいたいという気持ちが身に染みついてしまったように思います。

----必要な電気を風力発電と太陽光発電で賄っているとのことですが、自然エネルギーを採り入れた経緯についてお話しください。

 これは、社長が始めた事業ですが、とにかく昔から竜飛の人は風に苦しめられてきました。うちのホテルも旅館からスタートしましたから、屋根は飛ぶ、窓は割れるといった被害が絶えなかった。蟹田が「風の町」なら、竜飛は「突風の町」みたいなものです。この苦労の元を利益に変えよう、という発想ですかね。町の風車の奥に立っているのがうちの風車です。太陽光発電と合わせて、ホテルで使うほとんどの電気を賄っています。

■新幹線開業と震災から1年を経て

----昨年12月、東北新幹線が全線開業し、外ヶ浜町も東京方面からのアクセスが改善されました。新幹線開業によって町の観光にどのような変化がありましたか。また震災の影響は相当大きかったですか。

 昨年は、新幹線の新青森延伸後の宿泊客の激増と、震災によるダメージという両極端な状況を味わいました。新幹線開業は12月でしたが、年が明けてからがすごかったですね。JR東日本さんの個人向け商品、各旅行会社さんのツアー商品の効果が顕著に出まして、冬の稼働率は前年比で大きく向上しました。その後、「はやぶさ」が走るようになってからは、毎日、予約、予約です。「これが新幹線効果か」と思いましたね。

 それが3月11日以降は、キャンセル、キャンセル。開店休業状態が続きました。少し、息を吹き返したと思ったのは、6月頃。これもJRさんのフリーパス商品が出てからです。当然、震災直後は、前年対比どころの数字ではなかったわけですが、6月、7月で何とか追いついてきて、9月、10月で前年を上回ることができました。

 1年たって、今年が新幹線開業元年という気持ちでやっていますが、増便された「はやぶさ」のお客様を何とかつかんでいきたいですね。新幹線が、グランクラスなど付加価値を付けることでお客様を増やす努力をしているわけですから、受け入れる側も同じように努力しなければならないと思います。

----観光客のニーズが変化、多様化していると言われますが、その変化に対する対応や今後の抱負などについてお聞かせください。

 今のお客様は、とにかく、ここにしかないものに「触れたい、体験したい、学びたい」と思ってやって来ます。ただ温泉に入って、食事をして、眠って、朝風呂に入ってという、昔ながらのスタイルでは満足してくれません。

 竜飛も「何にもない」と言われ続けてきました。お客様は、夕飯の後でも、その辺をそぞろ歩いたり、地元のスナックで「津軽海峡・冬景色」でも歌いたいと思って来ているのに、それすらない。これではいけないと思い、昨年から青函トンネル記念館に夜間営業をお願いして、ツアーのお客様をバスで案内するという企画を始めました。星が見える日は、灯台まで上って、北海道の灯りを見てもらったりもします。ツアーの旅程表にないことですから、けっこうが人気ありました。昼間は、階段国道をはじめとする「ここにしかない」ものがありますが、ホテルとして、夜のメニューを提供していくことが重要だと思っています。

 その意味で、食もまたここでしかできない大きな体験です。昨年は、11月、12月に1回ずつ、マグロの解体ショーをやりました。中落ちはお客様自身にスプーンで削いでもらったのですが、もちろん初めてでしょうから、これは喜ばれました。あと、1月、2月、3月にはタコの釜茹でショー。目の前でタコを煮て、煮えたてを切って食べてもらう。少しですが内臓にもありつけますから、これも好評でした。

 中には「何にもない」を求めてここにいらっしゃる方もいるわけですが、どちらのお客様にも、「何にもない」を「ああ、よかった」に変えて帰っていただきたいですね。

■町村合併の効果をいかす

----外ヶ浜町はこのたび合併7周年を迎えます。新しい大きな町になったことで、景観、グルメ、温泉、歴史ロマンなど、町の魅力が大幅にアップしました。合併に伴い観光面ではどのような効果を感じていらっしゃいますか。

 合併に当たっては、竜飛についての問い合わせも蟹田にある役場に行くようになるわけですから、蟹田、平舘の観光担当の方が、竜飛崎をどう見ているのか不安はありました。実際は、PRなどいろいろな面でたいへんな熱意で取り組んでいただいています。皆さん、実際に竜飛に来てみて、観光バスの多さに本当に驚き、それからは自分の「町」の観光資源という意識で竜飛をとらえてくれているようです。

 一方で、蟹田の港まつり、平舘のうにの日、三厩の義経まつりなど旧町村のイベントは、他地域では他人事といった意識がまだあります。外ヶ浜の祭りとの意識が育てば、もっと大規模に、スムーズに実施できるのではないでしょうか。各地区に芸能をやる若者たちがいますから、一緒になって盛り上げていければと思います。

 また海産物など地元の食材も「ここにしかない」ものですから、お互いの地域で販売できる体制をつくっていくことが必要だと思います。そして地元の新鮮な食材を、もっと手軽に地元で食べられるようにしないと。今は、宿泊されている方に、「ここの名産は?」と聞かれても紹介できないんですね。名産が無いわけじゃないのに、手に入らないから答えられないんです。マグロにしろ、焼き干しにしろ、ホタテにしろ、またギョウジャニンニクやフキなど山菜もあるのに、地元で売っていない。竜飛には、鮮魚店が無いんです。せっかく来てくれた観光客の方が、ここで買えない。これは大きな問題だと思います。地元の名産が地元で食べられないのはおかしい。大成功している大間の「超マグロまつり」もそこから始まったわけですから、これは参考にしていくべきだと思います。

 あとは、やはり「外ヶ浜」の知名度を上げて行くことでしょうね。まだ竜飛、蟹田、平舘のほうが通りがいいですから。商工会も観光協会もがんばっていますが、これは時間がかかっても、継続してアピールしていくべきでしょう。

----最後に、ホテル竜飛が立地する竜飛は、必見の観光スポットが盛りだくさんですが、支配人おすすめの観光スポット、コース、穴場などを教えてください。

 やはり人気は「階段国道」です。ツアーも、階段の上でお客様を降ろして、バスは下の漁港で待っている。ガイドさんが旗を振って、みんなで階段を下りていくのですが、たいへんな人数です。やはり竜飛に来たらこれは体験したいでしょう。

 穴場と言えば、龍飛岬郵便局です。まず看板に竜がいます。今年は辰年ですから、記念写真を撮る人も多いです。ここで郵便を出せば、龍飛岬の風景印を押せますし、通帳の入出金をすると「龍飛岬郵便局」というスタンプを押してくれます。ガイドさんたちの間でもはやっているみたいですよ。もう一カ所、意外と知られていないのが龍見橋ですね。レストハウスから続く遊歩道にある橋ですが、ここにも竜がいます。あそこから見る日の出が最高なんです。私も最近まで知りませんでしたが素晴らしいです。ぜひ体験してください。