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総合流通拠点として
津軽の食文化と地域経済を支える

■農家の所得向上に向けて
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大中 忠氏
弘果 弘前中央青果株式会社
代表取締役社長
1944年、青森市生まれ。早稲田大学卒。 69年、弘果の前身である大中青果に入社。04年5月より代表取締役社長。弘果弘前中央青果を中心に、関連7社からなる企業グループを率いる。 弘果弘前中央青果は、旧大中青果、津軽地域42農協、りんご移出業者などが出資し合い71年に設立。公共的総合卸売市場として、りんごのほか、青果、花き、農産物加工品を取り扱う。 90年には本社敷地内に弘前水産地方卸売市場も開設。グループ全体として、生産・経営指導から加工品の流通、消費者への宣伝までを一貫して担っている。

----弘果は昨年、創立40周年を迎えました。本県の農業を支える大きな役割を長年にわたって担ってきた手応え、成果をどう捉えていますか。

 前身の会社を含めると創業から100年、青森の生産者と、地元を含めた全国の消費者とを結ぶ「総合流通拠点」としての責任をもって事業に取り組んできました。私どもは生産者の方々に収益を上げてもらって、そこから手数料をいただく商売ですから、生産者の所得向上につながる情報提供や提案も行いながら、ともに増収増益していきましょうということでやってきました。

 市場には、小売店などが周辺地域で販売するための青果物を扱う「消費地市場」の他、りんごについては、移出商などが県外市場に卸すりんごを仕入れる「産地市場」があります。弘果は、青果全般の「消費地市場」と、りんごの「産地市場」の両方の機能を有しています。これは全国でも珍しい例です。産地市場ができたのは昭和43年2月、青果市場の片隅を使って始めました。農家の皆さんから見ると、りんごをJAにあずけてもいいし、うちの産地市場で売ってもいいということで、選択肢が増えたというメリットはあると思います。平成6年には本社りんご市場の混雑を緩和するため、板柳町に全国初のりんご専門市場「津軽りんご市場」を開設しました。これにより、西北地区や、浪岡地区、岩木山の裾野地区などのりんご農家さんの利便性も向上し、より円滑な流通体制が整いました。

----弘果では、オリジナルブランド「つがりあん」を展開されています。市場が介入してブランドを立ち上げるという例は珍しいと思いますが。

 「つがりあん」も、少しでも生産者の所得が向上するようにと始めた取り組みです。全国的にはいくつかありますが、うちほど大規模にやっているところはないと思います。もともとは、生産調整による休耕田や、西郡の砂地の有効活用ということで、メロンの生産指導から始めました。専門の方が開発した青森での栽培に向いた品種の中で、商品価値が高いものについて、希望する農家に統一した栽培指導を行うというやり方です。メロンは知名度も高くなりましたし、農家にとって非常に安定した収入源になっています。

 りんごについては、多様性を求める消費者ニーズに対応し、また海外での販売も見据えて独自品種6種を取り扱っています。そのほか「つがりあん」ブランドとしては、いちご、さくらんぼ、ぶどう、桃などの果物と、キュウリ、かぼちゃなどの野菜を展開しています。りんご、メロン以外はまだ数は少ないですが、りんごの移出業者のネットワークを使って販売ルートを広げてきました。少しずつ農家の所得向上につながっていますので、さらに生産量を増やしていきたいと思っています。

■りんご産業を取り巻く環境

----TPPをはじめとした貿易自由化の流れ、デフレなどによる小売価格の低迷、後継者不足など、農業を取り巻く環境は厳しさを増しています。県内の生産者を支えていく上で、どのような取り組みの強化が必要と考えていますか。

 TPPは、生食用のりんごについてはさほど影響はないと思います。以前もオーストラリアやニュージーランド産のりんごが自由化で入って来ましたが、品質が全然違います。見た目もよくないし、全然怖くない。ただ外国産ジュースが今以上に安く入ってくるのはちょっと困りますが。

 一番の問題は、やはり現状の価格低迷です。りんごの平均小売価格はここ十数年上がっていません。中央の市場では、圧倒的なバイイングパワーをもった大手スーパーへの相対販売が増え、そこで卸値の相場が決まってしまうというのが実情です。産地の希望する価格はなかなか取れません。この市場システムを何とかしなければならないと思います。

 価格低迷による所得の停滞が、農家の後継者不足の要因の一つとなっています。農家が減って生産量が減少すると、それは農業の衰退、すなわち地域経済の衰退につながります。ですから、少しでも農家の所得が向上するよう、どういうりんごが売れているといった情報提供や「つがりあんブランド」の推奨などを行ってきたわけです。

 また弘果としても、りんごの生産会社をグループ傘下に加え、近年は生産面にも力を入れています。特に、後継者不足などで生産をやめてしまったりんご園は、放置しておくと害虫がわいたり病気が発生したりします。せっかく丁寧に管理してきた園地が、後継者がいなくて荒れていくのはもったいないですから、現在、こうした放任園を借りたり、買い上げて活用するという取り組みを進めています。うちで栽培できる面積はわずかですが、私どもがそういう先鞭をつけることで、農家の方々にも法人化して放任園を購入するなどの動きが出てくればいいと思っています。140年の歴史がある青森のりんご産業を、後継者不足などといった問題で衰退させたくないですから。

----消費者の嗜好が多様化し、また「食の安全」に対する意識も高まっています。流通の最上流において、食の安全についてはどのように取り組まれていますか。

 りんごのトレーサビリティーについては、産地表示や流通経路の安全性について責任を持たなくてはならないとの意識で、平成16年からグループ会社でシステムの開発に取り組んできました。箱単位での追跡システムはすでに確立し稼働しています。一昨年、秋田産のりんごが混入していた問題以降は特に厳しく対応しており、流通業者の皆さんにも産地の異なるりんごを混在させないよう徹底しています。

■海外への戦略的な進出を

----本県農業の筆頭はりんご。消費者の「りんご離れ」など、りんご産業が抱える課題を乗り越えるために、どのような対策が必要とお考えですか。

 23年産のりんごは、極端に少なくて心配しましたが、非常においしかったので、高い値でどんどん売れています。おいしく出来さえすれば、りんごはまだまだ市場ですごい力を持っているのです。ただ、国内でのりんごの消費量は人口構成の変化もあり、頭打ち状態といえます。ですからこれからは海外輸出を増やしていくべきでしょう。高い生産技術を持ち、何より世界一美しく、世界一おいしい青森のりんごは、すでに中国で高く評価され、つがりあんの「大紅栄」なども非常な高値で取り引きされています。台湾でも、青森りんごはアメリカ産のりんごに比べたら3倍ぐらい高いのですが、それでもどんどん売れています。東洋人は果物を贈答用に使いますから、いいものを作れば高くても確実に売れるのです。

 ただ、中国は日本の30倍、2500万トン以上のりんごを生産しています。そのうち栽培技術が発達して品質も良くなってくるでしょう。台湾も消費はほぼ飽和状態にあります。ですからこれからは、りんごが採れない地域に戦略的に進出していくべきです。りんごは果物の王様といわれるように、甘みも酸味もあって世界中どこの国の人でも喜んで食べます。南方のりんごの採れない国、ベトナム、インドネシア、タイ、そしてゆくゆくはインドという大消費地がありますので、そういう国々への戦略的な輸出を考えていくべきだと思います。それができれば、リンゴの将来は明るいと思っています。

■観光資源の発信と受け入れ体制の充実を

----大中社長は、「マイタウンひろさき」の代表として、弘前市中心街の再生にも取り組んでいらっしゃいます。弘前市をはじめ県内市町村のこれからのまちづくりについてご提言いただければ。

 一番困るのは人口の減少です。弘前を中心とした津軽地域の活性化のカギは、やはり観光振興でしょう。津軽の風景、岩木山をバックに一面りんごの花が咲いた風景、りんごがたわわに実った収穫の頃の風景、あれは世界に誇れる観光資源です。せっかく素晴らしい資源があるのですから、あとはその発信の仕方と受け入れ体制を整えることが重要です。大鰐や黒石の温泉郷を含めて、滞在型観光を広域的に受け入れていく体制づくりが必要なのではないでしょうか。