首都圏発 東奥トップインタビュー 明日への挑戦


■第8回 石丸 周象氏 津軽海峡フェリー株式会社 代表取締役社長

 
   
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石丸 周象(いしまる・しゅうぞう)
 1950年6月12日生まれ。愛媛県出身。75年、九州大学工学部造船学科卒業後、76年、運輸省(現・国土交通省)入省。東北運輸局船舶部長、国土交通省四国運輸局長などを経て、2008年、同省退職。11年、津軽海峡フェリー(株)代表取締役社長に就任。



快適な「カジュアルクルーズ」提供

―青森と函館を片道3時間40分で結ぶ「津軽海峡ロード」(1日8往復)に今年4月、新造船「ブルーマーメイド」が就航、「ブルードルフィン」に次ぐ2隻目の「カジュアルクルーズフェリー」となりました。「カジュアルクルーズフェリー」とは、どんなフェリーでしょう。

 豪華客船と従来フェリーとの中間のカテゴリーですね。ホテル並みの個室や家族向けのスペース、海を眺めながらくつろげるビューシートなどを備えた、ちょっとリッチな船旅が楽しめるフェリー。普段着でOKですし、キッズルームやドッグバルコニー、ドッグルームもあります。ゆったりした時間を快適な空間の中で気軽に過ごしながら、津軽半島や下北半島などを含めた津軽海峡の大パノラマを眺めることができます。港の出入りの際には青森や函館の市街地の景観も楽しめますよ。

▼物流支える“海の道”

―「SMILE 笑顔あふれる会社」「海でつながる道がある。Ocean Road」が企業のビジョン、そしてブランドスローガンですね。

 「SMILE」のSはセーフティーで安全、Mはミッションで使命・任務・目的・目標。Iはイノベーションで革新・刷新、Lはローカルで地元・地域とのネットワーク、Eはエンジョイで楽しい旅、快適な思い出をつくる旅。そして社員が笑っていられる会社を目指しています。

 青函トンネルの中を車が走ることはできませんが、フェリーは徒歩客のほか、トラックや自動車、消防車、救急車などの車両を運ぶことができるのが強み。海でつながる道で、我々船会社がトラック事業者さんと一体になって本州と北海道の物流を支えています。重大な役割だと強く感じています。先ごろ、JR北海道が運休しJR津軽海峡線が不通になった際は観光客の移動手段がなくなり、当社がタクシー会社やバス会社に連絡して車両を確保しフェリーで運びました。昨年1〜12月の就航率は99.8%。欠航で大量の荷物が止まらないよう、観光客ががっかりしないよう、定時定刻の安定運航に努めています。そのためには操船、港湾管理が大切です。

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ブルーマーメイド
災害時「動く避難所」の社会的使命も

―東日本大震災がありましたが、津軽海峡フェリーも災害対応という社会的使命を担っていますね。

 災害現場には自衛隊や警察、消防が駆けつける訳ですが、非常時には民間のフェリーも定期航路を離れて活動することもできます。限度はありますが、電気も清水も部屋も提供できるのです。「動く避難所」ですね。「ブルーマーメイド」は他のフェリーと異なり、船体の前後だけでなく側面にもランプウェイ(車両出入り口)を設けています。岸壁に船を横付けできさえすれば、物資を積載したコンテナや車両を降ろすことも可能です。救急室やけが人を運ぶストレッチャーごと載せることができるエレベーターもあります。いわゆる災害時の多目的センターであり、ここが他の船と異なるところ。青森港の災害対応岸壁に横付けして、各所へ医療用物資などを運ぶこともできるのです。

▼物流支える“生活航路維持担う”

―大間と函館を片道わずか90分で結ぶ「ノスタルジック航路」(1日2往復)。「大函丸(だいかんまる)」は就航1年余り経ちました。

 大間〜函館間は東京五輪開催の1964年に開設され、今年で50年になります。日本初の外洋フェリーである初代「大函丸(たいかんまる)」が就航し、70年には国道279号の海上航路にも指定されました。大間町や下北半島の人たちにとっては、函館に買い物に行ったり病院に行ったりする際に使う生活航路なのです。しかし、航路の維持は採算的に厳しく、今回の大函丸就航では大間町や県が建造費用や港湾整備費用を負担し、運航ノウハウを有している当社が運営する公設民営方式です。当社としては、しっかりと運航していきますし、観光客の利用を増やす取り組みもしています。

 一方、「ブルーマーメイド」や「ブルードルフィン」がカジュアルクルーズフェリーとすれば、大函丸はミニカジュアルクルーズフェリーであり、椅子席のファーストシートやカジュアルシート、フリースペース、バリアフリールームなどを備えているので、どなた様も快適に過ごしていただけます。また、エンジンの性能アップにより以前の片道100分を90分に短縮しました。なかなか苦心しました。ノスタルジック航路は大間のマグロ、函館のイカをはじめとする豊富な漁場であり、自然豊かな下北半島、歴史的建造物や夜景など見どころたっぷりなので、大いに楽しんでほしいですね。

―2016年3月に北海道新幹線が開業し、JRグループは青函エリアのデスティネーションキャンペーンも実施します。国内外から観光客らの入り込みが増えますが、どう対応しますか?

 ゆったりとした時間を過ごす船の魅力と新幹線のスピードとをコラボした旅行商品をたくさんつくってタイアップしたい。「トレイン&カジュアルクルーズ」です。飛行機で来る人には「エア&カジュアルクルーズ」を情報発信し、ぜひともセットで売り出したい。

 また、大間のフェリーターミナルに電気自動車のスタンド、大函丸には充電器を設けて「下北半島エコドライブ」を広めて行きたい。さて、函館に来た人はどこに行くのか。自然景観の優れた大沼や松前に行く人、大函丸で下北に行く人もいるでしょう。むつ市を中心に大間、佐井、風間浦とかへ。それぞれの地域の魅力づくりは、それぞれの地域が行う必要があります。新幹線開業時に新造船を投入する予定もあります。燃料高などの外的要因に耐えられる燃料効率性を有した船舶、ひいては企業組織を目指したい。

 我々のビジネスのエリアは青森であり、下北であり、函館です。本州最北端に位置する下北は北海道に最短であるという魅力があります。青函トンネルを利用しないとすれば、船か飛行機を利用するしかないわけです。当社としては津軽海峡の魅力を伝えていくことが大事だと考えています。「自然」「食・酒」「宿泊」などいろいろな魅力もあります。国の特別史跡として有名な三内丸山遺跡がある青森市同様、函館側にも縄文遺跡があります。縄文時代から交流があったと言われていて「海峡を通る」のではなく「大きな湖を渡る」という感覚だったのではないでしょうか。

▼マイカーの旅を促進

―今後も津軽海峡フェリーの果たす役割は大きいですね。

 安全を最優先に、24時間365日の安定運航と快適な船旅をお届けするのが大きな目標であり使命です。船の果たす役割があるということを情報発信していく必要があります。「マイカーで北海道へ」「マイカーで東北へ」。本州と北海道を結ぶ最短航路であることも乗船客様に知っていただき、関心を高めたい。青森から函館へ、函館から大間へ“回遊”するような、津軽海峡を旅する当社ならではの「船旅」を確立していきたいですね。

(聞き手=東奥日報社常務取締役東京支社長・鳴海成二)

 ◇

使命・安全・革新の経営/東京支社長の視点

 函館ターミナルでフェリーからトラックなどが次々と降りてくる光景を見せてもらい、津軽海峡フェリーが本州と北海道とを結ぶ物流の大動脈を担っていることを実感した。インタビューで石丸社長が「使命」という言葉を口にしたが、まさに重責を担っているのである。

 使命は、もとより徹底的な安全安心の運航により確保されている。その上で、観光客らが快適な船旅を楽しめるよう客室など種々の工夫がしてあるのだ。新造船ブルーマーメイドは、本来は不要なのだが、災害時対応として船の側面にもランプウェイを設けた設計。これも使命感の表出の一つであろう。

 加えて指摘したいのは船自体の革新性。8820トンのブルーマーメイドの大きさの船であれば、通常は2軸2基のエンジンを搭載するのだが1軸1基。3割も燃費を削減でき、かつ、メンテナンスコストも削減できるという船舶業界注目の船なのだ。経費削減分は結果的に運賃に反映される。安全で快適という総合的な利用者サービスに向け、明確な経営姿勢を貫いている。(鳴海成二)






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青森(写真上)大間(同下)の各フェリーターミナル
 <会社概要>

■商号 津軽海峡フェリー株式会社

■本社所在地

〒041−0821

北海道函館市港町3−19−2

TEL0138−62−3550

支店=函館、青森、大間、営業所=青森、東京、札幌

■設立 1972年2月23日

■代表 代表取締役社長 石丸周象

■資本金 2千万円

■年商 123億円

■事業内容 一般旅客定期航路事業

■社員数 陸上163人、海上240人(2014年4月1日現在、契約、嘱託社員含む)




 
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