首都圏発 東奥トップインタビュー 明日への挑戦


■第5回 清水 彰氏(長野県出身)株式会社AOKI 代表取締役社長

 
   
清水 彰(しみず・あきら)
 1955年3月10日生まれ。長野県出身。77年、法政大学経営学部卒業後、同年、アオキファッション(現AOKIホールディングス)に入社。商品、店舗開発、販売促進などを経験し、2003年、AOKIホールディングス専務。06年、AOKIカンパニープレジデントに就任。08年、分社化により現職



社会性追求し顧客満足の商品

−AOKIはウール100%形態安定スーツや、丸洗いできるスーツなど画期的なスーツを開発してきましたが、どんな考えからでしょうか。

 清水社長 私どもの会社の一番大きな特徴は、創業以来年間、AOKIグループの全業態に共通した経営理念をすべての判断基準としてビジネスをしてきたことです。経営理念は、“ビジネスそのもので顧客満足を創造し実践してお客さまの役に立つ”「社会性の追求」、“適正利益を上げ適正配分をし税金を納めることで社会に貢献する”「公益性の追求」、チャリティーコンサートなど、“ビジネス以外で世の中のためになる”「公共性の追求」です。

 ウール100%形態安定スーツやウオッシャブルスーツの開発は「社会性の追求」ということです。スーツにどんな機能を付け、どんな色にし、どんなデザインだったら、お客さまに喜んでいただけるのかということを、出店している四百数十の店舗から情報を全部吸い上げて、顧客満足の創造に向けて商品開発しているのです。

◇信州大と共同開発

−では、商品の技術開発はどのように?

 清水社長 信州大学繊維学部と私どもで共同開発した商品が2009年に日本繊維機械学会から認められ技術賞をいただきました。着心地とか着やすさという感覚的なものを、信州大学でできるだけ数値化してもらいました。具体的には、あらゆる部分で、伸びる、縮む、かがむときにどうなるかを数値化して、どういうスーツなら一番着心地が楽なのかチェックして、アームホールの丸みや肩の具合などを型紙として作って商品化しました。AOKI独自のものです。

−工場の製造ラインの作業はどうなっているのですか。

 清水社長 だいたい200から250工程で1着のスーツができますが、私どものスーツはブランドによっては250から300工程ぐらいと、余計に手間を掛けています。また、日本人の体は欧米人と比べて肩が前に出ているので、ヨーロッパのスーツをそのまま持ってきても着づらい。そのため日本人の体に合わせた型紙を作っています。

◇何重もの検品体制

−工程を増やすなどして、着心地のよいスーツを作っているわけですね。品質管理自体はどのようにしているのですか。

 青木誠路副社長 第1段階の生地段階では、第三者機関である東京繊維総合研究所を必ず通して何十種類もの検査をします。例えば摩擦堅牢(けんろう)度、耐光堅牢度では、摩擦で毛玉ができたり、色あせたりしないかどうかを検査します。クリアした生地だけが本生産の縫製にかかります。第2段階の本生産では、工場の技術者とAOKIの商品管理の者がサンプルを取り上げ、見た目や、縫製のどこでしわが入りやすいかということを多段階で検査してから大量生産に移ります。

 商品部には繊維製品管理士がいて、商品の素材ごとにクレーム事例をしっかりと勉強しています。例えば、伸びる素材だとポリウレタンを混ぜればいくらでも伸びるのですが、スーツの膝が元に戻らないということがあります。AOKIではポリウレタンは使わないという独自の基準を設けています。ではストレッチ性を出すにはどうすればよいかということになりますが、AOKIでは糸の生産段階から管理して対応しています。

 また、生地段階と縫製段階のほか、海外工場から出荷する際は商品管理の担当者が現地で抜き打ちチェックします。さらに日本では愛知県一宮市のセンターに集中して商品が入ってきますが、もう一度、検査してOKの商品だけ各店に配送します。つまり、何重ものチェックを通ったものだけがお店に並ぶ仕組みです。


技術開発や品質管理にも全力

◇ビジネスの原点

−サラリーマンに好評の2着目千円という低価格にも挑戦してきましたね。

 清水社長 昔は1カ月の給料がスーツ1着分という時代がありました。メーカーや百貨店の力が強かった。AOKIの創業者が、“サラリーマンが毎日着替えられ、お値打ちのあるスーツを大量生産できないか”と考えたのが、そもそもビジネスを始めるきっかけでした。できるだけ多くの自前の店をつくり、できるだけ多くのスーツを自前で作って、自前で売るSPA(製造から小売りまで垂直統合した販売業態)的なスーツのビジネスを始めたのです。

−青森市に月6日、2店舗同時オープンし本県にもAOKIが初進出しました。今後の店舗戦略、出店計画は?

 清水社長 AOKIの中長期目標として、現在450店ある店舗を750店まで増やしたい。青森市に初出店しましたが、東北で未出店の秋田、山形にもどんどん出店していきたい。ほかにも九州、四国など出店したいエリアはたくさんあります。

−紳士服は団塊世代の大量退職などで市場規模が縮小していると聞きます。生き残り戦略、他社との差別化はどのように?

 清水社長 内需の取り込みはまだまだできます。売り上げ増の三つの柱があり、一つ目のスーツに関しては競合店が限られてきているので、シェアを上げていくことが可能。新規のお客さまに来店していただき、品質の良さを前面に出してシェアを獲得していく。二つ目は売り上げが伸びているレディスをさらに伸ばす。三つ目はカジュアルウエアで、65歳まで働く団塊世代が着ることが多いジャケットとスラックスのマーケットが広がっています。団塊の世代以上のカジュアルも相当取り込めるので、大々的に打ち出していきたい。

 青木副社長 当社一押しのレディススーツ「プレシャスライン」は、デザイナーの小川彰子さんに監修してもらいました。360度どこから見てもシルエットがきれいで女性らしいラインのデザイン。キャリア層の女性の声に応えて開発しました。

◇地元に愛される店に

−最後に青森県のみなさんへAOKIからメッセージを。

 清水社長 今回オープンした2店舗の店長、副店長は首都圏から送り込みましたが、パートナー(パート)は全員地元の方。今後は店長、副店長も地元の方を採用します。今後の出店エリア候補の弘前、八戸でも、地元の方が運営する店、地元の方に愛される店にしていきます。私どもはスーツだけを扱っているわけではありません。カジュアルやレディスも、子供向けも、おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんの全員が楽しめる店を地元スタッフの手でつくっていきます。地元の方々にAOKIをぜひかわいがっていただきたい−というのが私たちの願いです。

(聞き手=東奥日報社取締役東京支社長兼大阪支社長・鳴海成二)


 ◇

取れないボタンが象徴/東京支社長の視点

 AOKIの「取れないボタン」という有名な話があるそうだ。以前、中国で生産したスーツのボタンは3、4回着ると取れやすかった。付け方を改善して現地工員に指導し取れないようにしたが、いまや他社の中国工場も同社の仕様書と同じようなボタン付けをしているという。ボタン一つに対する取り組みが商品作りに対する真摯(しんし)な姿勢を象徴的に表している。

 では、店の売り場はどうか。懸命に勉強し同社のスタイリストに認定されたスタッフが約2200人いて、各店に数人ずつ配置されている。客の好みや用途要望を確実に把握し、お似合いの商品をしっかりと勧める。サービス産業生産性協議会から2012年度に「スーツ専門店部門で圧倒的な顧客満足度ナンバーワンという名誉ある賞をいただいた」と喜ぶ。

 まじめに技術開発し、まじめに作り、まじめに検査し、まじめに要望を聞き、まじめに売る。すなわち、ものづくりビジネスの基本を地でいく。全体の企業活動を支えるのは一貫した経営理念。明確かつ明快な企業として走り続ける。

(鳴海成二)






写真
ともに10月6日にオープンした青森浜田店(上)と青森西バイパス店
 <会社概要>

■商号 株式会社AOKI

■本社所在地
 〒224−8688
 神奈川県横浜市都筑区葛が谷6−56

■TEL
 AOKIカンパニー 045−941−3488(代表)
 ORIHICAカンパニー 045−945−5178(代表)

■設立 2008年4月1日(株式会社AOKIホールディングスの完全子会社)

■代表 代表取締役社長 清水 彰

■資本金 1億円(2012年3月日現在)

■年商 942億5200万円(2012年3月期)

■事業内容 紳士服・婦人服および服飾品ならびにファッション商品の企画販売

■従業員(正社員) 1677人(2012年3月末現在)


 
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