首都圏発 東奥トップインタビュー 明日への挑戦


■第3回木村康氏(熊本県出身)JX日鉱日石エネルギー株式会社 代表取締役社長

 
   
顔写真
木村 康(きむら・やすし)
 1948年2月28日生まれ。熊本県出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、70年4月、日本石油(当時)入社。2002年6月、取締役九州支店長。07年6月、常務取締役執行役員エネルギー・ソリューション本部長。10年7月、JX日鉱日石エネルギー代表取締役社長就任



エネルギーの安定供給が使命

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八戸LNG基地の完成予想図
―日本を代表する世界有数の総合エネルギー企業として、使命や役割をどう考えていますか。

 エネルギー企業にとって最も重要な使命は、エネルギーを「つくる」「運ぶ」「売る」という役割を確実に実行すること。当社の商品は石油のみならず、液化天然ガス(LNG)、石炭などエネルギー全般にわたっています。昨年3月の東日本大震災を通じ、最終消費者にエネルギーを確実に届けることの重要性をあらためて痛感しました。わが国の経済、社会活動に不可欠なエネルギーの安定供給の使命を果たしたい。

◇エネルギーを効率良く変換

―安定供給の一方で、エネルギーの変換企業ということを掲げていますね。

 最近、私が社内外に発しているメッセージなんです。エネルギーをお客さまの使いやすい形に、できるだけ100%に近い効率で変換したい。二酸化炭素(CO2)抑制につながり、環境にやさしいということにもなります。最終的にはガソリン、灯油、軽油、電気、熱という形にエネルギーを変換して届けます。効率のよい変換技術を備えた、エネルギー変換企業ということです。

―グローバルに展開している企業ですが、戦略の一端を。

 中期経営計画の事業戦略4本柱の一つとして「アジア内需取り込みを中心とした海外事業強化」に取り組んでいます。成長が期待されるアジアの需要を取り込み、事業を拡大するのが狙い。JX日鉱日石エネルギーが発足した2010年7月以降、大阪製油所の輸出型製油所化、インドネシアにおける潤滑油製造工場の建設、また、韓国企業と合弁で、将来性の高いリチウムイオン電池の原料となる負極材の製造工場建設、パラキシレンや潤滑油製造設備の新設を決定しています。さらに、2012年3月には、カナダにおいて原料炭開発鉱区を取得しました。従来の電力会社向けを中心とした一般炭事業に加えて、鉄鋼生産に必要な製鉄会社向け原料炭事業も手がけることによって、石炭事業の拡大を進めてまいります。

◇震災対応型SS実証開始

―産業用のさまざまな製品の一方で、私たちに身近なENEOSブランドのサービスステーション(SS)があります。震災対応を含め、どんな取り組みを?

 ENEOSのSSは全国に約1万2千カ所。給油や安全点検などカーライフをトータルでサポートする「Dr.Drive」、お客さまに「また来たい」と思ってもらえる快適空間と最高のおもてなしを提供する「ValueStyle」を展開し、支持される店舗づくりを目指しています。東日本大震災の時、供給が一時不安定になり、皆さまにご迷惑を掛けました。その経験を踏まえ、地震に強く、地域住民の皆さまに対する生活インフラ支援を可能とする新しい震災対応型SSの実証を開始しました。既に宮城県石巻市に非常用発電機や太陽光発電システムなどを備えた1号店を開所しましたが、2013年度までに、東北から九州にかけての太平洋側と瀬戸内海沿岸に計12カ所設置します。将来的には現在のガソリン、軽油、灯油に加え、電気自動車向けの電気、燃料電池自動車向けの水素といった、車を動かす燃料をワンストップで供給できる総合エネルギーステーションの展開も考えています。


八戸から北東北・道東へ天然ガスを供給

◇「創エネ事業」を展開

―新エネルギーである燃料電池などの取り組みも進んでいます。

 東日本大震災以降、節電対策や停電への備えといったエネルギーに対する社会的要請が高まり、お客さまのニーズも同様に変化しています。当社では省エネルギー、再生可能エネルギー、自立型エネルギーの三つをキーワードに「ENEOS創エネ事業」の展開を開始しました。そのスタートとして、昨年10月に市販機としては世界で初めて、SOFC型〈注〉の家庭用燃料電池「エネファーム」の販売を開始しました。本年度中には、SOFC型エネファーム、太陽光発電システム、さらにはオリジナルの蓄電池システムを組み合わせることで、系統電源の停電時にも、エネファームの運転を継続し、電力を確保することができる、家庭用の「自立型エネルギーシステム」の販売を開始する予定です。さらに、当社独自の専門研修を通じて「エネルギー診断士」を育成・認定し、無料で家庭のエネルギー診断を行ったうえで、お客さまごとのライフスタイルやニーズに即して、新エネルギー機器の導入、家電製品や住宅性能、省エネに関する行動面の改善等を提案する、エネルギー診断サービス「Dr.おうちのエネルギー」の展開を開始しました。2013年度中を目標に、全国に約千人の「エネルギー診断士」を配置する予定です。

◇産業用素材等も提供

―そのほかの新規事業ではどんなものがありますか。

  エネルギーだけでなく、原材料、素材としての石油の力をいろいろな形で展開したい。機能化学品と言っていますが、例えばビル空調の省エネなどに寄与できる、熱を蓄えて出し入れする蓄熱材「エコジュール」という商品を製造販売しています。医薬品分野では、関連会社において医薬品製造用培地、体外受精用培地とその関連製品を国内外に提供しています。

―さて、八戸市で2015年4月稼働目標のLNG基地の建設が進展しています。どのような役割を担うのでしょうか。

 化石燃料の中で比較的環境負荷の低い天然ガスに対するニーズが強くなってきています。当社は、2007年から八戸市で内航船を受け入れるLNG2次基地を稼働させ、周辺需要家や都市ガス会社へはパイプラインで、遠方の需要家に対してはローリーで供給しています。現在、需要の増大に対応し、海外から外航船を直接受け入れることが可能なLNG1次基地を建設中で、2015年から運転を開始し、従来より広範囲にLNGをお届けする予定です。八戸市のみならず、青森県全体、秋田県、自動車工場が進出している岩手県へ供給し、さらに、北海道の釧路にはLNG2次基地を建設して、八戸から内航船で転送します。八戸と釧路に基地を新設することで、八戸1次基地をハブとする北東北から道東地区における天然ガスのサプライチェーンを確立し、安定供給を目指します。

(聞き手=東奥日報社取締役東京支社長兼大阪支社長・鳴海成二)

〈注〉SOFC(SolidOxideFuelCell=固体酸化物形燃料電池)

 電解質にセラミックを用い、各種燃料電池のなかでも発電効率が最も高い。セルに貴金属が不要なことも特徴。


 ◇

アジアへ戦略的挑戦/東京支社長の視点

 JX日鉱日石エネルギーは、売り上げ11兆円弱という巨大JXホールディングスの中核企業としての自覚を強烈かつ明確に有していると感じた。「エネルギーを何としても届ける」−。日本全体にエネルギーを安定供給するという使命感である。商品は工場などの産業用から街角のSSまで幅広く多品目。同社の機能が低下すれば、日本の経済活動、日常生活にもリアルタイムで影響が出ることになる。一方で、グローバル企業である同社はエネルギーを輸入・加工するだけでなく、アジアの内需取り込みを中心とした海外事業も取り組みを加速させている。エネルギー確保は国の安全保障とも絡むだけに、企業の基盤強化・存続がより重要だ。同社の戦略的な挑戦を見守りたい。(鳴海成二)




地図  <会社概要>

■商号 JX日鉱日石エネルギー株式会社

■本社所在地
〒100−8162
東京都千代田区大手町2−6−3

■TEL
0120−56−8704(ENEOSお客様センター)

■設立 1888年5月10日

■発足 2010年7月 1日

■代表者 代表取締役社長  木村 康

■資本金 1394億円(JXホールディングス株式会社の100%出資)

■年商 9兆1475億円(12年3月期)

■事業内容
(1)石油製品(ガソリン・灯油・重油・潤滑油など)の精製および販売

(2)ガス・石炭の輸入および販売

(3)石油化学製品等の製造および販売

(4)電気の供給

(5)燃料電池、太陽電池、蓄電装置などの開発、製造および販売

■従業員 単体=6338人、連結=1万3239人(12年3月末現在)




 
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