13
乗鞍岳(岐阜・長野県)
広大な緑のハイマツ帯/観光と環境の両立 模索
 
マップ ハイマツの緑に覆われた乗鞍岳の峰々。乗鞍スカイライン終点の畳平には、比較的軽装の登山者が目立つ=7月、高山市丹生川町、乗鞍岳魔王園地から

 標高約2500メートルの森林限界を超えると、広大な緑のハイマツ帯が現れた。7月、日本一の標高を誇る道路、乗鞍スカイラインで電気自動車(EV)ユーザーがドライブを楽しむ「ジャパンEVラリー2016」が開催された。環境保全のためマイカー規制する道路を自動車が走る姿は、懐かしい光景だ。

 「景色も空気も本当にきれい」。東京都から参加した川端由美さん(45)は興奮気味に語った。高山植物の花畑が広がる終点の畳平(たたみだいら)(2702メートル)まで30分ほどで着く手軽さが同道路の魅力。1973年に開通し、ピーク時には40万人を超える利用者がいた。車の排ガスや利用者のごみなど自然環境に悪影響が出たため、2003年に規制を開始した。

◆ ― ◇ ― ◆

 「ようやく、自然環境が戻ってきた」。畳平の花畑で観光客をガイドしながら、自然観察指導員の上平尚さん(75)は規制の効果を実感する。白くかれんなハクサンイチゲや黄のミヤマキンバイ、黒紫のクロユリ。排ガスでしおれていた花々が咲き誇っている。

 乗鞍岳は中部山岳国立公園に指定され、国が活動を厳しく制限。マイカー規制は、国や県、市と地元の観光業者らでつくる乗鞍自動車利用適正化協議会が実施、観光と環境保護の両立に向けて議論を交わしてきた。

 ただ、同道路の昨年の入り込み数は約12万900人とマイカー規制以降で最低に。地元観光関係者は焦りを感じる。麓の高山市奥飛騨温泉郷平湯の平湯(ひらゆ)温泉から出る定期バスの利用は伸びているが、観光バスツアーが減っている。飛騨乗鞍観光協会の中萩久夫会長は「やはり車で走ってこそ魅力を感じられる」ともどかしさを語る。

◆ ― ◇ ― ◆

 滞在時間を延ばそうと、平湯温泉の観光協会は、同温泉から桔梗ケ原(ききょうがはら)(2580メートル)をつなぐ約10キロの乗鞍新登山道を再整備している。クラウドファンディング(インターネットを使った資金調達)で資金を募り、倒木の撤去や階段足場の設置を行うなど新たな動きもある。

 乗鞍岳の最高峰、剣ケ峰(3026メートル)直下、乗鞍岳頂上小屋の町野親生代表(64)は「乗鞍岳の魅力はやはり、広々としたハイマツ帯」と語る。乗鞍岳でゆったりと楽しんでもらおうと、11日から小屋の夜間の休憩利用も開始。「多くの人に乗鞍岳の魅力を知ってほしい」

 人と自然の共生を考える山。乗鞍岳は地域に愛されながら、これからも多くの人々をいざない続ける。

(岐阜新聞社)

旅メモ平湯温泉 薄白濁の湯
豊かな自然の中で源泉掛け流しの湯を楽しめる大露天風呂=8月6日、高山市奥飛騨温泉郷平湯、ひらゆの森

 岐阜、長野県にまたがる乗鞍岳は、剣ケ峰(けんがみね)を主峰に大日岳や魔王岳など標高2500メートルを超える23の峰が連なる。畳平から峰へ続く登山道は北アルプスの絶景を楽しめる一方、麓には針葉樹や広葉樹の森に山野草が群生する五色ケ原の森が広がり、伏流水が噴き出す落差40メートル、幅60メートルの布引滝(ぬのびきたき)など見どころが満載。ガイド同伴で有料一般公開されている。

 乗鞍スカイラインを走る定期バス(5月15日~10月31日)は、平湯温泉が発着点。平湯バスターミナル近くにある温泉施設「ひらゆの森」は、白く薄濁りした源泉掛け流しの炭酸水素塩泉。男湯に七つ、女湯に九つある大露天風呂でゆっくりと旅の疲れを癒やしたい。

 食事所では、飛騨地域のブランド牛、飛騨牛や郷土料理の朴葉(ほおば)みそ、敷地内で養殖する「とらふぐ」の刺身や鍋を味わえる。

 宿泊は1泊2食付き税込み8100円から。日帰り入浴は500円。JR高山駅からバスで約1時間。「平湯温泉」下車。