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石鎚山(愛媛県・高さ1982メートル)
修験道の開祖が開山/信徒の子ら協力し頂へ
 
マップ 天狗岳に見守られながら石鎚神社頂上社で神事を行う子どもら ほぼ垂直な「三の鎖」の岩場を登っていく石鎚青少年錬成会の参加者

 西日本最高峰の石鎚山。約1330年前に修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が開山し、空海も修行したと伝わる。山岳信仰の山として知られ、「お山開き大祭」の7月1~10日には全国から信徒が訪れる。大祭から約1カ月後の8月上旬、未来の信徒と期待される県内外の小学生から大学生までの約50人と霊峰の頂を目指した。

 50年以上続く「石鎚青少年錬成会」は、信徒の子どもらが数日間の共同生活や石鎚登山を体験する。過去に参加し、今回は先達の石鎚神社権禰宜(ごんねぎ)の佐々木規人さん(48)は「友達をつくり、いい思い出と一緒に再び石鎚山に戻ってきてほしい」と話す。

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 錬成会では「表参道」と言われる西条市側のルートで山頂を目指す。ロープウエーを下車し、約20分歩くと信徒の宿も並ぶ石鎚神社成就社に到着。安全祈願の神事を終えた小学4年~大学生が神門をくぐり、霊峰のお膝元に入った。

 最初の約1キロは緩やかな下り坂が続き、ブナなどの原生林が夏の暑さを忘れさせてくれる。白装束と鉢巻きをした子どもらも、元気よく「なんまいだー」と声を響かせるが、八丁からは本格的な登りが始まる。

 前社ケ森(ぜんじゃがもり)への急坂の階段は、いくら上っても終わりが見えない。徐々に口数が少なくなっていく。かつて信徒らが一晩過ごしたという中間地点の夜明かし峠は、晴れていれば石鎚山を一望できるが、この日は霧の中。子どもの半数近くが石鎚初登山で、ゴールが見えず不安そうな子を先輩が励ます。

 ここからが石鎚山のヤマ場だ。山頂までの険しい岩場の3カ所に見たこともないような太い鎖が掛かる。

 最初の「一の鎖」は全長33メートル。子どもたちは「えいえいおー!」と気合を入れ、鎖をしっかり握りながら慎重に登っていく。中には身軽にすいすいと上がる子もおり、初めてだった西条市神戸小学校4年伊丹実玖さん(9)は「疲れたし、足も痛いけど鎖は怖くなくて簡単」とけろり。

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 「二の鎖」(65メートル)を迂回(うかい)すると、頂上広場へと続く「三の鎖」(68メートル)のほぼ垂直な岩壁が立ちはだかる。佐々木さんが「冷静に勇気を持って」と中学生以上の約20人に声を掛ける。鎖の輪の中につま先をねじ込み、後ろを振り返るとあまりの高さに肝を冷やす。手を離さぬように汗をぬぐって上を目指し、成就社から約4時間かけて霧に覆われた弥山(みせん)にたどり着いた。

 山頂周辺は四国の山ながら、シコクシラベなど亜寒帯林が広がる。参加者は夜になると風の音に耳を澄ませて星空を眺めながら、自然の息吹を感じていた。錬成会のリーダーを務めた愛知県立名古屋南高3年稲熊真子さん(18)は「いろんな人に支えられて登っている。日々のありがたさが分かってよかった」と目を輝かせた。

(愛媛新聞社)

旅メモ石鎚山温泉京屋旅館 湯船から渓谷美

 石鎚山へは久万高原町にある県道石鎚スカイラインを通り、終点の土小屋(約1500メートル)からも登ることができる。ササ原や白骨林などを眺めながら尾根沿いの整備された登山道を進むと、「二の鎖」の下で成就ルートと合流。近くには環境配慮型トイレや休憩所もある。山頂までは約4.6キロで、およそ2時間半。頂上山荘がある弥山から最高峰の天狗岳までは絶壁の上を15分ほど歩く。

 登山道では、西条市側にロープウエーがなかった時代から信者らが使っていた旧道なども現存する。

 ロープウエーで下りると1970年代に建てられた石鎚山温泉京屋旅館が登山の疲れを癒やしてくれる。四国では珍しい白濁色の湯は疲労回復や美肌効果などがあるとされ、温度は夏場は40度、冬場は42度ほど。湯船からも美しい緑と爽やかな渓谷美が楽しめる。午前10時開店で、終業時間を登山客やスキー客などのためロープウエーの最終便に合わせているのもありがたい。年中無休で、日帰り入浴は大人500円、小学生以下300円。JR伊予西条駅からバスで約1時間。