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早池峰山(岩手県・高さ1917メートル)
多様な地質 花の名山/人々魅了 信仰、物語も
 
マップ 巨大な蛇紋岩が連なる早池峰山の小田越登山道。「花の名山」としても知られ、かれんな高山植物が登山者を迎える=岩手県花巻市 早池峰山の固有種・ハヤチネウスユキソウ。「日本のエーデルワイス」と呼ばれ、登山者の人気が高い

 北上山地(北上高地)の最高峰で、遠野、花巻、宮古の3市にまたがる早池峰山(はやちねさん)は、高山植物の宝庫として知られる花の名山だ。信仰の山としてあがめられてきた歴史や特殊な地質が分布する背景もあり、全国各地から訪れる人々を魅了し続けている。

 7月下旬、小田越(おだごえ)コースを歩いた。西側の河原の坊コースは大規模な土砂崩落で5月下旬から閉鎖されており、多くの登山者は標高約1250メートルの小田越登山口から2~3時間かけて山頂を目指す。

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 早朝のひんやりした空気が心地よい。早池峰山では自然環境を守るため、携帯トイレの使用が実質的に義務づけられており、以前に購入したものをリュックサックにしのばせた。

 アオモリトドマツの林を抜けると、一気に視界が開けた。積み重なった蛇紋岩の上を慎重に歩く。ふと視線を移すと、登山道の脇に固有種のナンブトウウチソウが顔をのぞかせていた。淡紅色の花を眺めながらしばしの休憩。

 最も人気を集めるハヤチネウスユキソウのかれんな姿もあちこちで見ることができた。長野県飯島町から訪れた伊原明弘さん(65)は「中央アルプスのヒメウスユキソウと同じくらいかわいらしい」と目を細めていた。

 早池峰山は花の名山のほか、古い時代の多様な地質の分布や珍しい地形も見どころの一つ。祈願すると富が授かると言われる5合目付近の「御金蔵(おかねぐら)」、絶壁を鉄のはしごで登る8合目付近の「天狗(てんぐ)の滑り岩」など、数々の奇岩・巨岩が登山者を出迎える。

 はしごを登り切ると頂上はもうすぐだ。白い斑点が特徴のホシガラスが登山者を歓迎している。山頂では神社にお参りしてから雄大なパノラマを満喫。遠野以南の北上山地は国際リニアコライダー(ILC)の建設候補地になっており、近い将来、世界の最先端の科学技術が集まることに願いを込めた。

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 同行してもらった遠野市の早池峰山岳会、元会長の海老勝彦さん(72)=同市穀町(こくちょう)=は「高さでは岩手山(2038メートル)に劣るが、たくさんの高山植物や山岳信仰と歴史、言い伝えの物語など、人々を引きつけるものがたくさんある」と胸を張る。

 早池峰山南側の県道では、交通混雑解消のため、6月第2日曜日から8月第1日曜日までの土日曜日と祝日に限り、岳(だけ)駐車場(花巻市)-江繋(えつなぎ)(宮古市)間で車両乗り入れを規制している。登山者はシャトルバスを利用して登山口に移動する。

(岩手日報社)

旅メモ神楽の日/伝統の舞 今に
大償神楽など3団体の月替わり公演が楽しめる「神楽の日」

 花巻市大迫町はワインと神楽の里で知られる。岳、大償(おおつぐない)の両地区に伝わる神楽は早池峰山を霊山として信仰した山伏の祈りの舞だったとされ、起源は南北朝時代までさかのぼる。

 岳神楽、大償神楽は「早池峰神楽」の総称で1976年に国重要無形民俗文化財第1号指定を受け、2009年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。

 500年以上にわたり脈々と受け継がれた伝統の舞を今に伝えるのが「神楽の日」だ。市無形民俗文化財の八木巻神楽を加え3団体が月替わりで登場。ボランティアが支える定期公演は9年目を迎え「魂を揺さぶる舞だ」と県内外からファンが訪れる。

 公演は1、8、12月を除く毎月第2日曜日。入場券は前売り800円(当日千円)。問い合わせは実行委(市大迫総合支所内、電話0198-48-2111)へ。