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星ケ城山(香川県・高さ816メートル)
瀬戸内の絶景一望/歴史ロマン感じる城跡
 
マップ 島沖を航行するフェリーや対岸の香川県東部などを見渡せる星ケ城山の東峰頂上

 香川県の小豆島東部にそびえる星ケ城山は、瀬戸内海に浮かぶ島しょ部の最高峰。ここには南北朝時代に「星ケ城」という山城が築かれ、今も遺構が残っている。瀬戸内の絶景と歴史ロマンあふれる山を小豆島観光ボランティアガイドクラブ会長の松尾志郎さん(72)らメンバーと一緒に登った。

 草壁港から渓谷美で知られる寒霞渓(かんかけい)に向かって6キロ余り歩くと、寒霞渓ロープウェイのこううん駅(標高295メートル)がある。「表十二景」と呼ばれる約2キロの遊歩道を進むこと約1時間、山頂駅(同612メートル)に到着。星ケ城跡は、ここからさらに2キロほど登ったところだ。

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 星ケ城を築いたとされるのは、備前国児島飽浦(あくら)の豪族、佐々木信胤(のぶたね)。もともと北朝側だった信胤は、足利尊氏の重臣と京洛三美人の一人、お妻(さい)の局(つぼね)を奪い合い南朝側に転じ、お妻の局を連れて小豆島に入った。悲恋は郷土芸能「安田おどり」として島に伝わっている。

 信胤は天然の地形を生かして、西峰(同805メートル)に本城を、東峰(同816メートル)に詰(つめ)の城を築いた。東西の峰は道なりに歩いて400メートルほどの距離。さらに西峰には防御の遺構が多く、門を据えた「一の木戸」には大きな石が残り、約3.5メートルの深さがあったとされるV字型の「外空濠(そとからぼり)」は当時の弓矢の射程距離から射落とすのに最適な設計という。水の確保にも苦労したようで、山腹に降った雨を集める「水の手曲輪(てくるわ)」は約7メートルの深さに掘った池に水を導くように造られていた。

 鍛冶場跡からは多数の鉄滓(てっさい)が出土。この日も赤茶けた塊を目にした。通常の鉄滓と比べ、鉄分が少なく砂分が多い。耐火粘土の入手が難しい悪条件の土地。苦心する先人の姿に思いをはせた。

 西峰の山頂、断崖に突き出た巨岩上から絶景を眺めた後、居館などが置かれた東峰に向かう。

 東峰に残る石塁。東西南北の角を強化した「出隅(ですみ)」には、中世の山城では珍しく「四神の思想」を取り入れ、四つの神を祭って安泰を祈ったとみられる。「東の出隅」で方位を調べると、ぴったり真東。当時の技術に驚かされた。

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 木々を抜けると、ついに最高地点。見渡す限りの空と海。麓の安田、苗羽地区や内海湾などを一望できるほか、天気が良ければ、対岸にある香川県東部や徳島県、兵庫県淡路島にも目が届く。

 ここには一等三角点が設けられている。ちなみに全国の三角点に据えられている標石の大半は小豆島産。良質な石材の産地として知られ、古くは大坂城の石垣などにも使われた島の石が各地で使命を果たしていると思うと、何だか誇らしい。

 南朝側の制海権確保に尽力した信胤。「数々の苦難を乗り越えてできた星ケ城。信胤の強い意思を感じざるを得ない」と松尾さん。その傍らで同ガイドクラブのメンバーは「瀬戸内の絶景と歴史の醍醐味(だいごみ)をぜひ味わって」と口をそろえた。

(四国新聞社)

旅メモ小豆島 随所にアート 40作品
ビートたけしさんとヤノベケンジさんが共同作品した「アンガー・フロム・ザ・ボトム 美井戸神社」

 香川、岡山両県の島々では現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2016」が開かれている。小豆島も会場の一つで、国内外の作家が手掛けた約40の作品が島内各地に展示されている。

 人気作品の一つが、ビートたけしさんと美術家のヤノベケンジさんが共同制作した「アンガー・フロム・ザ・ボトム 美井戸(びいと)神社」。古井戸から巨大な化け物が出現するイメージで作られた。「二十四の瞳」の作者で、今年が五十回忌の作家、壺井栄の生まれ故郷・坂手地区に飾られている。

 星ケ城山の麓、草壁港近くにある「ミノリジェラート」は、食文化の発信をテーマに掲げる芸術祭の一環で、地元のイタリアンシェフらが今年3月にオープンしたジェラート専門店。島でとれる旬の食材を使ったアイスが評判だ。

 芸術祭は3年に一度。3回目の今回は、春・夏・秋の3会期制で、現在は夏会期(9月4日まで)の真っただ中。秋会期は10月8日~11月6日。会期外でも一部の作品は鑑賞できる。小豆島へは高松のほか、岡山や兵庫の港からも定期船が出ている。