立山(富山県)
神の領域 連なる威容/地元県民に親しまれ
 
マップ 日本三霊山の一つに数えられる立山。台形の山に三つあるピークがそれぞれ(右から)雄山、大汝山、富士ノ折立=立山・室堂

 日本三霊山の一つに数えられ、毎年国内外から大勢の登山客が訪れる立山。厳密には「立山」という名の山はなく、雄山(おやま)(3003メートル)、大汝山(おおなんじやま)(3015メートル)、富士ノ折立(ふじのおりたて)(2999メートル)の総称だ。3千メートル級の威容を誇る一方、標高2450メートルの室堂までは立山ケーブルカーと立山高原バスで行けるため、小中学校の校外学習としての登山も行われるなど、広く富山県民に親しまれている。

 三つの山を稜線(りょうせん)に沿って進む縦走に挑戦しようと、8月上旬、立山ガイド協会事務局長の佐伯高男さん(57)=富山県立山町芦峅寺(あしくらじ)=と共に、山へ向かった。

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 室堂から一ノ越までは石畳の登山道が続き、歩きやすい。「こんにちは」。登山客とすれ違う際に交わすあいさつが気持ち良い。途中、祓堂(はらいどう)という祠(ほこら)を見つけた。古くから立山には神がすむとされ、「昔はここで白装束に着替えて雄山に向かった。これから先は神様の領域です」と佐伯さんが教えてくれた。身も心も引き締まる思いがした。

 雄山の山頂へは大小の石が交じった岩場を登っていく。時折、冷たい風が吹き、汗をかいた体には気温以上に寒く感じる。夏でも防寒の備えは必要だ。歩幅を短くし、ゆっくりと一定のペースで足を前に踏み出していく。

 前方から登山客の歓声が聞こえた。国の特別天然記念物で絶滅危惧種のニホンライチョウがいた。富山の県鳥にもなっている。「親子ですね。出会えるのは運がいい」と佐伯さん。ライチョウは“神の使い”なのだそうだ。驚かさないようにそっと近づき、カメラのシャッターを切った。

 雄山山頂は大勢の人でにぎわっていた。横浜市の会社員、水崎紀彦さん(44)は、娘の珠子さん(14)と一緒に初めて訪れたという。売店で買えるカップ麺を親子で仲良く味わい、水崎さんは「坂が急で苦しかったけど、雲の切れ間からみくりが池がきれいに見えた」とうれしそうに話した。校外学習で訪れた小学生たちが「ヤッホー」と元気いっぱいに叫んでいた。

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 稜線に沿って、大汝山を目指した。登山道は角張った石が増え、道幅もぐっと狭くなった。約30分歩くと、立山の中で最も高い大汝山の山頂に。残念なことにこの日は視界が悪かったが、晴れた日には黒部ダムで知られる黒部湖が見える。

 富士ノ折立の頂まではさらに20分ほどかかった。岩場に腰掛け、おにぎりを頬張りながら、ガイド歴27年の佐伯さんに立山の魅力について聞いた。「高山特有の生き物や植物、珍しい地形など、登るたびに違う風景が見える。また、山頂に立つ達成感は何物にも代え難い」。山を愛する気持ちが伝わった。

 室堂を発着点に円を描くような登山道を一周したのは、出発から約6時間半後。膝はガクガクだったが、充実感でいっぱいになった。

(北日本新聞社)

旅メモみくりが池温泉 日本一高い場所
日本一高い場所にある天然温泉「みくりが池温泉」=立山・室堂

 みくりが池温泉は、標高2410メートルと日本一高い場所にある天然温泉だ。下山した登山客らが大勢訪れ、疲れた体を癒やす。室堂ターミナルからは徒歩約15分。

 火山活動が続く地獄谷が近いため、浴室に入ると硫黄のにおいがし、山に来たという気分が高まる。白く濁った源泉掛け流しの温泉は、神経痛、筋肉痛、五十肩などに効果があるとされる。浴槽は大小二つ。温度は41度と45度に保たれており、好みに合った湯を楽しめる。窓からは四季折々に変化する山の風景が見える。

 営業期間は4月中旬~11月下旬で、日帰り入浴は午前9時~午後4時。料金は大人(中学生以上)700円、小学生500円、幼児無料。レストランや喫茶店もあり、深海魚「ゲンゲ」やシロエビなど富山湾の新鮮な幸を使った料理や、自家製ブルーベリーソフト、人気のピザなどが味わえる。和室もあり、宿泊(一泊9250~1万4190円)もできる。問い合わせは同温泉、電話076(463)1441。