霧島連山(宮崎・鹿児島県)
美景誇る火山の博物館/自然の力強さを満喫
 
マップ 高千穂峰へのごつごつした岩肌を登る子どもたち。眼下に遮るものはなく雄大な景色を見渡せる 山頂に突き刺さる「天の逆鉾」=高千穂峰

 宮崎、鹿児島両県にまたがる霧島連山は大小20を超える火山が連なり、「火山の博物館」と称される。古くから山岳信仰の対象となり美景を誇り、全国初の国立公園に指定された。一帯は地質学的に貴重であり、自然公園「ジオパーク」にも認定されている。

 代表格は円すい形の山容が秀麗な高千穂峰(1574メートル)。7月下旬、宮崎県都城市の県御池(みいけ)青少年自然の家で研修中の両県の小中学生約30人の登山に同行した。

 鹿児島県霧島市の高千穂河原からのコースで歩みを進める。途中で出合う御鉢(1408メートル)は、直径約500メートルもある火口の大きさに驚かされる。中腹になると、山肌が崩れて赤と黒の地層の重なりが露出。マグマが冷える際の空気の触れ具合で色の違いが出るそうだが、自然の力強さを満喫できる。

 頂上から見下ろす広大な景色は圧巻の一言。宮崎県三股町の中学1年生、福元未(み)祥(さき)さん(13)は「きつかったけど、麓からいつも見上げる地元のシンボル的な山の上に初めて立てた」と感動していた。

 この日は4時間ほどかかったが、成人男性なら約2時間でたどり着く。ガイドの東(ひがし)多佳道(たかみち)さん(67)=都城市=は「鹿児島県の屋久島や長崎県の雲仙普賢岳が見える時もある」と教えてくれた。

 山頂では、天孫降臨の神話でニニギノミコトが降り立った時に突き立てたとの伝説が残る「天の逆鉾(さかほこ)」が存在感を放つ。幕末の志士、坂本龍馬が妻のお龍と新婚旅行で訪れた際、逆鉾を抜いたという逸話も残る。

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 霧島連山では5年前、新燃岳(しんもえだけ)(1421メートル)が大規模噴火を起こした。火山活動は現在落ち着いているものの、火口周辺は立ち入り規制が続いている。そのため、人気の高い高千穂河原-最高峰の韓国岳(からくにだけ)(1700メートル)-えびの高原(宮崎県えびの市)の縦走はできない。

 新燃岳噴火の影響は他の登山道にも及び、都城市側から高千穂峰に登る「夢が丘コース」も通行止めになったが、正式な登山道でないため“再開”できずにいた。

 都城山岳会などが約2千人の署名を集めて働き掛けた結果、昨年11月に環境省から登山道の認定を受けた。同会の温水(ぬくみず)武男さん(80)は「森の巨木をめでながら、ゆっくり登るのがいい」と薦める。

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 韓国岳も霧島連山を語る上で欠かせない存在であり、えびの市側から登った。近くの硫黄山(1310メートル)でも噴火が懸念されていることから、遠回りのコースを選んだ。

 ホオジロやツバメなどの鳥類や、生い茂るマイヅルソウといった山の豊かな植生が目を楽しませてくれる。同行した「えびのガイドクラブ」の西道覚三さん(62)さんと上水正喜さん(66)は「生き物が豊富で、いつ登っても飽きない」と笑顔を見せる。

 8合目からは地をはうような深緑のミヤマキリシマと赤と灰色の岩肌が広がる。勾配も緩やかになり、足取りも軽くなって約1時間半で登頂した。気温23度。涼しい風が心地よい。火口湖を見下ろす眺望、高千穂峰や大浪池、桜島を臨む絶景が疲れを吹き飛ばしてくれた。

(宮崎日日新聞社)

旅メモえびの高原荘 前泊に便利

 「霧島ジオパーク」は日本ジオパーク委員会から認定されており、山麓や山岳を巡り、火山活動が生み出した特徴的な地形や自然を満喫できる13のモデルコースを用意。ガイドも頼め、説明を受けながら歩くと山の魅力をより深く味わえる。

 韓国岳などの登山で前泊などに便利なのが、えびの高原にある「えびの高原荘」。温泉は源泉掛け流しの炭酸水素塩泉で、大浴場からは雄大な韓国岳の姿が臨める。下山後の汗を流すのにもうってつけだ。前日までに予約すれば、登山用の弁当も用意してくれる(別料金)。

 宿泊は1泊2日食事付き、税込み1万500円から。

 宮崎市中心部からは、宮崎交通が土、日曜日と祝日に運行する直行バスで約2時間半。「えびの高原」で下車。(運行は11月27日まで)。車では九州自動車道えびのインターチェンジから約40分。