御釜(蔵王連峰)
色合い神秘的な火口湖/避難路整備 人出戻る
 
マップ 熊野岳山頂に至る馬の背登山道付近から望む御釜

 山形と宮城県境にそびえる蔵王連峰。最高峰熊野岳(1841メートル)に近い火口湖「御釜(おかま)」は連峰最大の観光名所で夏季は登山客、観光客でにぎわう。御釜を見やりながら熊野岳山頂に歩を進めると、山形県上山市出身の歌人斎藤茂吉(1882~1953年)の歌碑が立っている。快晴なら歌人の詩心を高揚させた壮大な山岳風景を楽しめる。

 山形市の蔵王温泉街から御釜手前の蔵王レストハウス駐車場まで車で約40分。山岳観光道路蔵王エコーラインと蔵王ハイラインを通ってスムーズにアクセスできる。昨年4月、御釜の火口域周辺1.2キロへの立ち入りを規制する噴火警報が発表されたが、同6月に解除。今年7月には御釜西側の尾根筋「馬の背登山道」の通行規制が1年2カ月ぶりに解除され、熊野岳山頂との往来が可能になった。万一に備えて緊急避難路も整備済みだ。

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 夏山シーズン真っただ中の今、御釜周辺はすっかり人出が戻り、観光客や本格登山を楽しむ人の姿が絶えない。御釜は北西側の熊野岳と南側の刈田岳の間にあり直径約400メートル。湖面は淡い緑色で光線状態によって色合いが変わるため「五色沼」とも呼ばれる。モノトーンの岩塊が目立つ風景の中で神秘的でさえある。展望台には外国人の姿も目立ち、開放感に浸りながら記念撮影を楽しんでいる。

 蔵王レストハウスから熊野岳山頂まで片道40分程度。なだらかな馬の背登山道は広々として眺望が良く、御釜の景色を横目に足取り軽く進める。途中出会った宮城蔵王ガイド協会メンバーは「御釜周辺は緊急避難路が確保され、安心して散策できる環境が戻った。今年から『山の日』があるので、これをきっかけに多くの老若男女に古里の名峰に親しんでほしい」とほほ笑んだ。その言葉にうなずく。

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 山頂手前の斜面に差し掛かると“高山植物の女王”が迎えてくれる。あちこちの岩場に咲いているコマクサ(駒草)だ。ケシ科の多年草で高さ5~10センチ前後。名称は花の形が馬の顔に似ていることに由来する。厳しい自然環境の中でもピンクのかれんな花を咲かせ、心を和ませる。これを見たいがために登ってくる人も多いようだ。8月中旬ごろまで楽しめる。

 熊野岳山頂に到達すると平らな台地に熊野神社があり、近くに茂吉が生前唯一認めた歌碑が立つ。蔵王は茂吉が子ども時代から仰ぎ見た特別な山。実弟に歌碑建立計画を聞いて最初は渋ったが、1年後に承諾して歌を作り揮毫(きごう)もするなどしっかり関わった。建立5年後には自ら歌碑を訪ね「歌碑ハ大キク且ツ孤独ニテ大ニヨイ」と日記に書いた。

 碑に刻まれた歌は「陸奥(みちのく)をふたわけざまに聳(そび)えたまふ蔵王の山の雲の中に立つ」。熊野岳山頂に立つと、この歌そのものの壮大な感覚が湧き上がる。晴天の日は360度の大パノラマが広がり、運が良ければ遠く秋田県境の鳥海山も見える。

(山形新聞社)

旅メモ蔵王温泉 癒やしの湯
源泉が流れる川を生かして造った大露天風呂。大自然の中で温泉に漬かると疲れも吹き飛ぶ=山形市蔵王温泉

 蔵王連峰の麓に広がる蔵王温泉は、開湯1900年を誇る名湯。東北随一とされる強酸性の硫黄泉が、登山客やスキー客を癒やし、湯治客の健康増進を図ってきた。日帰り温泉「蔵王大露天風呂」は巨大な浴槽が川辺に広がり、大自然に溶け込むような雰囲気を堪能できる。温泉街ではソウルフードとして玉こんにゃく、稲花餅(いがもち)が愛されている。

 山岳総合リゾートとしての魅力は多種多様。樹氷や紅葉など四季を通じた見物客は後を絶たず、アジアからのツアー客も多い。夏は標高900メートルの涼を感じるトレッキングやサイクリングが最適。中央高原のドッコ沼やブナ林では夏山の風が薫る。

 クラレ蔵王シャンツェ(蔵王ジャンプ台)はノルディックスキーのワールドカップジャンプ女子の舞台。今年はサマーヒルが完成した。ノルディックスキー複合の全日本メンバーをはじめ、各種スポーツ選手が合宿に訪れている。