普賢岳(長崎県・高さ1359メートル)
心癒やす森林浴の森/噴火で誕生 新山を望む
 
マップ 登山客でにぎわう普賢岳山頂。目の前には1990年の噴火で誕生した平成新山が見える=雲仙市小浜町

 雲仙の夏は快適だ。長崎県雲仙市小浜町の雲仙地域一帯は、気温が下界よりも約5度低い。この涼しさもさることながら、雲仙岳と総称される自然豊かな山々は、四季折々の表情を見せる。その魅力を肌で感じるために、7月末、主峰の普賢岳山頂を目指した。

 普賢岳登山は今回で2回目。初回は5月、1990年の雲仙・普賢岳噴火で生まれた平成新山(1483メートル)の防災視察登山に同行した。198年ぶりの噴火は約5年間も継続。現在は安定した状態だが、警戒は続いている。

 防災視察登山は普賢岳への登山道の途中から警戒区域に入る。マグマが冷えて固まった岩がごつごつと折り重なって「よじ登る」という感じ。不安定な足場、いつ蒸気爆発が起こってもおかしくない状況に、命の危険すら感じた。貴重な経験だったが、神経がすり減る普賢岳デビューだった。

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 一方、普賢岳やお隣の妙見岳は「日帰りで気軽に登れる山」として人気があり、年間3万人超の登山者でにぎわう。今回は普通に山の魅力を満喫できそうだ。

 仁田峠からいざ出発。整備された登山道を歩くこと約40分、あざみ谷に到着。ここは「森林浴の森・日本百選」に選ばれ、近くには野鳥の水場もある。アマチュアカメラマンも多く訪れ、長崎市の松林静風さん(73)もその一人。「オオルリ、キビタキ、ウグイス…、ここに来ればいろんな鳥の写真が撮れるよ」。そう言ってまたファインダーをのぞく。鳥たちを驚かさぬよう、ここでは静かに過ごすのが暗黙のルール。

 あざみ谷から次なる分岐点、紅葉茶屋までは約30分。勾配はきつくなるが、整備された歩道が続く。茶屋でほかの登山者と交わす会話も楽しみの一つ。長崎市から家族4人で訪れた高野篤さん(45)は「家族で来るのは3度目。みんなで登るのは楽しい」。一方、長男の聡君(10)は「でもきつい」とぽつり。苦笑いを浮かべる父と一緒に、茶屋を後にした。

 茶屋からは北回りの新登山道と、山頂まで最短ルートの南回りに分かれる。新登山道は5月に一度通ったので、今回は逆回りで最短ルートへ。急に険しくなった山肌を、肩で息をしながら登る。先ほどまでの整備された階段が恋しい。登山道をたどること約30分、ようやく山頂に到着した。

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 目の前に蒸気を上げながら平成新山がそびえ立つ。噴火した普賢岳の火口から流れ出た溶岩が、約5年間にわたり隆起を繰り返し、県内で一番高い山となった。今は褐色の岩肌が、いつか普賢岳のように緑で覆われる日が来るのかと思うと、少しだけ地球の息吹が聞こえた気がした。

 南島原市有家町の片岡勉さん(71)は、熊本から帰省した娘夫婦や孫と一緒に山頂へ。帰省の際は登山と雲仙温泉が恒例行事だ。片岡さんは「近場でこんないい場所がある。登山と温泉を口実に孫にも会えるし、やっぱり山はいいね」。登山者たちの笑顔と雄大な自然に心も体も癒やされ、足取り軽く帰路に就いた。

(長崎新聞社)

旅メモ雲仙温泉 夏場も冷涼
観光のメインスポットでもある雲仙地獄。大叫喚、お糸、清七など30あまりの地獄がある=雲仙市小浜町、雲仙温泉街

 雲仙岳は島原半島の中心部に位置する普賢岳や国見岳、妙見岳など「三岳五峰」の総称。1934年、日本で最初の国立公園に指定された。

 春の花々や秋の紅葉などに目がいきがちだが、雲仙が真価を発揮するのは夏。標高700メートルにある温泉街の8月の平均気温は20度前半で、明治時代は外国人の避暑地としても栄えた。

 その昔「温泉」と書いて「うんぜん」と読まれていたほど湯の町としての歴史は古い。泉質は硫黄泉で殺菌力が高く、皮膚病や神経痛に効果があるとされる。各旅館には趣向を凝らした露天風呂などがあるほか、100円から入れる昔ながらの共同浴場もある。

 今夏からは新たな試みも始まった。これまで夜間通行止めだった市道小浜仁田峠循環線とロープウエーを期間限定で開放。「雲仙仁田峠プレミアムナイト」として8月の毎週土曜、JTB九州などがバスツアーを企画した。同社ホームページから申し込める。

 雲仙温泉へは車で長崎自動車道諫早ICから約1時間、JR諫早駅からバスで約1時間20分。