秋田駒ケ岳(秋田県・高さ1637メートル)
雲上の花畑へ続く道/豊富な植物と眺望が魅力
 
マップ 高山植物の宝庫として知られる秋田駒ケ岳。咲き乱れる花々に疲れも吹き飛ぶ

 岩手との県境にまたがる秋田県の最高峰・秋田駒ケ岳。全国的に数多い「駒ケ岳」の中で、群を抜く高山植物の豊富さと眺望が人気。「秋田駒」「秋駒」とも呼ばれ、多くのファンを持つ。

 梅雨明けが待たれる7月下旬、山は一年を通して最も輝く季節。短い夏を謳歌(おうか)するかのように色とりどりの花々が咲き乱れ、大勢の登山者でにぎわいを見せていた。

 花と眺めに加えて“手軽さ”もこの山の魅力。8合目までバスが運んでくれるから、子どもから高齢者、山歩きの初心者にも比較的簡単に楽しめる。バスを降りたら、秋田駒ケ岳を形成する男女(おなめ)岳や男岳、横岳の山頂までは1時間半から2時間の行程。

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 身支度を調えてゆっくり歩きだす。登山道脇でいち早く出迎えてくれたのはオニアザミ。赤紫色の大きな花が重そうに垂れる。ハクサンシャクナゲの淡いピンクは、まるで登山者を雲上の花畑へといざなうかのように点々と続く。盛りを過ぎたか、花びらを散らす。

 1時間ほど歩くと上り坂は終わり眼前の視界が一気に開ける。ここからは平たんな草原の中に延びた木道を行く。遠くに近くに、今を盛りと咲き誇るニッコウキスゲのオレンジ色の花が見事な群落を見せてくれる。

 辺りに目を凝らすと、エゾツツジやミヤマリンドウ、ヨツバシオガマ、ツバメオモトなどの花々が濃い緑の中に見え隠れする。

 愛らしい“山の乙女”たちを眺めながら進むと、木道は大きな池に突き当たる。標高1500メートル付近の阿弥陀池だ。登山者の多くは、ここでひと休みしてから男女岳や男岳の山頂を目指したり、縦走を始めたり、思い思いの山歩きを楽しむ。

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 このところファンが急増中なのが「ムーミン谷」。メルヘンチックな名前と秋田の山らしからぬアルペンムード漂う風景が、多くの登山者を引きつけてやまない。

 午前中、谷を覆ったガスが晴れるのを待っていた大阪市の自営業米田誠さん(45)も谷に魅せられた一人。「昨年、初めて紅葉の秋田駒を歩いた。帰ってからいろいろ調べたらムーミン谷を見つけて、どうしても夏に歩いてみたくなってやって来た」。阿弥陀池の避難小屋に宿泊し3日目を迎えたという。

 午後になって、ガスが晴れた谷底から険しい坂道を登って来たのは、山形県酒田市から1人で来たという80歳の阿部紀美さん。「朝4時に起きて車を飛ばしてきた。アルペン的な風景が魅力。花の時期に毎年来ている」と、笑顔で下山していった。

 手軽さ故に事故を心配するのは山岡一さん(66)。1980年に田沢湖高原にロッジを開業。徳島県出身。現在は秋田県自然公園管理員を務め、年間70回以上は秋田駒に登るという。「サンダル履きで山に入る人もいる。山では何が起こるか分からない。用心に用心を重ねて自然を楽しんでほしい」と、無謀な登山者に警鐘を鳴らしている。

(秋田魁新報社)

旅メモ蟹場温泉 秘湯の趣
ブナ林の中にある蟹場温泉の露天風呂。秘湯の趣たっぷりでファンが多い

 秋田駒ケ岳は、十和田八幡平国立公園の南端に位置する。主峰・男女岳をはじめ、男岳、横岳など眺望の優れた山で構成されている。活火山で、地表温度が高い地熱域が広がる女岳には噴気が漂う。8合目に通じる県道駒ケ岳線は、10月31日までの土日と祝日、8月19日までの平日はマイカーの乗り入れが規制される。時間は午前5時半~午後5時半。規制日は田沢湖高原の「アルパこまくさ」と8合目駐車場を結ぶ路線バスを運行。

 田沢湖高原の乳頭山ろくには七つの湯宿が点在する。秘湯の趣が人気で、なかなか予約が取れない宿もある。そのうちの一つ「蟹場温泉」は、付近の沢に多くのカニがいたことからその名が付いた。1846年の開湯。内風呂と女性専用の露天風呂、ブナ林に囲まれた混浴露天風呂がある。それぞれ源泉が違う。

 宿泊は1泊2食付き、税込み1万410円から。JR田沢湖駅から羽後交通バスの乳頭線で約50分。「乳頭蟹場温泉」で下車。