あおもり昆虫記
オオルリボシヤンマ

 水辺が好きである。中学、高校時代を弘前市で過ごしたせいもあり、海を見ると、どことなくワクワクしてくる。

 川の流れもよい。弘前支社に転勤を命じられ、たまたま見つけた借家が岩木川沿いにあったのはラッキーだった。仕事が早く終わった夕方、家の前の川原を散歩すると、幸せな気持ちになってくる。沼、池にしてもそうだ。見つけると、水辺に立たなければ、どうにも満足できない。水辺まで行ったところで、どうなるわけでもないが、「あ、水がある」とバカなことを心の中でつぶやき、なぜか安心する。

 というわけで、北八甲田の毛無岱は大好きな場所のひとつだ。高層湿原に小さな池が点在しているからだ。山から見おろすと湿地帯に木道が縫い、無数の小さな池が点在しているのが見える。その光景が目に入るとわくわくしてくる。もっとも、湿原に立ち入ることはできない。木道から眺めるだけだ。それでも、池を見ると幸せな気持ちになる。

 1985年8月20日。わたしは、トンボを見るため毛無岱に行った。池はわたしの期待にこたえてくれた。水草のまわりをアオイトトンボが飛び、大型のオオルリボシヤンマが池塘群の上を悠然と滑空していた。わたしは、オオルリボシヤンマの産卵の撮影を始めた。雌は水面に顔を出している水草につかまりながら、腹を水中に差し入れ、水草の茎に卵を産みつけていた。

 ふとカメラのファインダーから目を離した時、産卵中の雌の上を雄が旋回していることに気がついた。縄ばり飛翔である。と、そこへ他の雄が侵入してきた。“既得権”?を得ていた雄は瞬時のうちに向きを変え、侵入者に猛然と向かっていった。

 バサ、バサッ。両者の羽のぶつかりあう音が静寂を破った。この激突が2〜3回繰り返されたあと、侵入者はあきらめてどこかへ飛び去った。雄は再び縄ばり飛翔に入り、雌は何事も無かったかのように黙々と産卵を続けていた。

 日本だけにいる美しいトンボだ。1994年の夏、友人と一緒に毛無岱を訪れたとき、オオルリボシヤンマはいつもと変わらず、池の上を縄張り飛翔をしていた。友人は、このトンボを見たのは、それが初めてで、瑠璃色の姿の美しさに「すごい!」と言ったきり絶句。素直に感動していた。

 このトンボは成長に年月がかかり、成長と冬季休眠を2度繰り返しながら、産卵から4年目の夏にやっと親のヤンマに変身する、といわれている。

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