あおもり昆虫記
ムカシヤンマ

 高校時代のクラスの名簿。わたしの次がTMだった。TMは中学教師となり野鳥観察に力を注ぐとともに、だいぶ前から「青森県内のトンボ全種の写真を撮影するんだ」としゃかりきになっている。

 ある日、TMから電話があった。「ムカシヤンマの写真撮ったぞ」。声は勇んでいた。極めつけの満足そうな声だった。わたしは、ムカシヤンマの存在は知っていたが、見たことがなかった。TMの自慢話にわたしは少し焦ったが、ムカシヤンマ撮影のために出掛けていくほど執心はしていなかった。「そりゃ、よかったな」と淡々とこたえ、TMを祝福した。

 1995年6月25日。数人の釣り友達と黒石市の川に出掛けたときのこと。仲間は、前日の釣果がゼロだったため、この日はやや殺気だって川に入って行った。わたしは釣りはまったく下手なので、前日のスコンクですっかり戦意を喪失させ、虫の撮影に専念することにした。

 林道を歩いていたら、バサバサッという音を立てて、大型のトンボが飛んでいるのが目に入った。すぐ、オニヤンマか、と思った。しかし、これまたすぐ、この季節、オニヤンマが飛ぶわけがない、と考え直す。また、飛び方がどうもオニヤンマにしては変だ。

 飛んではすぐ止まる、止まってはすぐ飛び立つのだ。飛ぶのは速いのだが、しょっちゅう止まって落ち着きないことこのうえない。オニヤンマのように悠然・超然としたところがない。トンボとしては、考えられない行動だ。止まるときは、葉などに体を密着させる。いかにも葉にペタッとくっついて止まる感じだ。そして、4枚の羽の先端を神経質にぴくぴく動かしている。逃げない。トンボには珍しい。

 おっ、これがあのムカシヤンマではないか! 初対面だったが、すぐ分かった。久しぶりに興奮しながらカメラのシャッターを切った。難なく撮影できた。

 ムカシヤンマは、ジュラ紀に繁栄した原始ヤンマの末えいと考えられ、形態が原始的。この仲間は環太平洋諸国に9種いる。このムカシヤンマは、日本だけにいる。最初に岐阜県で発見されたため、以前はギフヤンマといわれていた。幼虫期間は5−6年といわれ、トンボの仲間ではムカシトンボに次いで長い。

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ムカシトンボ・ムカシヤンマの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

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