あおもり昆虫記
ニホンカワトンボ

 昆虫は、とっくに進化しきった生物だ、と思われがちだし、思いたくもなるが、どうもそうではないらしい。カワトンボがその良い例だ。

 以前カワトンボは、1種とされてきた。が、わが国の世界に誇るトンボ博士の朝比奈正二郎さんが1976年、ニホンカワトンボ、ニシカワトンボ、オオカワトンボの3亜種に分けた。ヒガシとニシの違いは、頭が比較的大きいかどうか、頭のてっペんがへこんでいるのかどうか、はねの先が丸みを帯びているかどうか−などで、要するに、よほどの専門家でない限り見分けることは不可能。オオカワトンボは、この2種より体がやや大きい。

 ヒガシとニシの分布は、どこで分かれるかというと、それはフォッサマグナ(大地溝帯)。日本列島の成り立ちとトンボの頭の大きさに関係があるとは、ロマンがありそうな世界だが、なんでフォッサマグナを分かれ目にして、トンボの形が微妙に違ったのか、となると凡人の頭では、とてもとても。

 さらに2007年には再び新しい分類がなされ、ヒガシカワトンボとオオカワトンボは「ニホンカワトンボ」に、またニシカワトンボは「アサヒナカワトンボ」に変更された。カワトンボをめぐる分類の世界はややこしい。

 カワトンボには、まだまだなぞがある。雄の羽は、橙色(写真のトンボ)と透明の2種類あり、地域によっては、淡い橙色の中間型や、逆に濃い橙色のものもある。雌の羽は、透明のものだけ、といわれる。このように、羽の色が定まっていないのはなぜか。まだ進化途中のトンボなのでは、と思いたくなる。

 平地から山地にかけての小川、谷川に生息し、県内でもけっこう多く見ることができる。観察してみると雄の中でも橙色の羽のトンボは活発に飛び回り、透明の羽の雄は、葉の上などにひっそりとまっている。活発に飛び回るということは、強い縄張りを作っていることを意味する。何万年かたつと、雄は行動的な橙色のはねばかりになるかもしれない。

 わたしの記憶をたどると、小泊村の川、青森市野内川、横浜町吹越烏帽子のカワトンボの雄は、ほとんどが透明型で橙色型は少数派。しかし東通村猿ケ森では逆に橙色型が多かった。興味の尽きないトンボといえそうだ。

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