あおもり昆虫記
オオアオイトトンボ

 新聞記者をやっていても、虫を観察していても、「おやっ」という気持ちが非常に大切だ。「おやっ」と感じるためには、いつも情報を得ておかなければならない。情報を頭の中に蓄積しておけば、すこしでも状況が変われば「おやっ」と気づく。それが特ダネにつながる。あるいは、虫の新しい知見につながる。

 1994年7月の十和田市の雑木林。林の縁を歩いていたとき、イトトンボが1匹、ぽつんと止まっているのが目に入った。体の金緑色が怪しいまでに光っていた。アオイトトンボの未熟型だ、と最初は思った。このトンボは普通種だ。が、そのとき、頭の中で何かがはじけた。

 「アオイトトンボとどこかが違う。どこが違うのか分からないが、なんとなく変だ」

 虫屋の世界でも新聞記者でも、この「なんとなく変だ」と思うことが、前述のように大切なのだ。アオイトトンボならカメラを向けることはないが、この心の引っ掛かりがシャッターを切らせた。

 あとで専門家に調べてもらったらオオアオイトトンボ。やっぱりアオイトトンボとは違っていた。心の引っ掛かりが無ければ知ることができなかったトンボだった。アオイトトンボは成熟すると白い粉を身にまとうが、オオアオイトトンボの場合は違う。雄は、成熟しても白い粉を身にまとわず、金属光沢を放つ鮮やかな金緑色のままだ。

 この日は、チョウのオオムラサキを見るため、十和田市郊外の雑木林に足を運んだのだが、あいにくオオムラサキはいなかった。このため、気の赴くままに歩き回り、つい別の雑木林になんとなく入り込んでしまった。小学校時代、こんな雑木林ばかりが家の近くにあったものだなあ…。雑木林のたたずまいは、懐かしい雰囲気に満ち満ちている。心のふるさとに帰ってきた感じで、気持ちが休まる。居心地が良いのだ。襲ってくるヤブカがいなければ、いつまでもいたい林だった。

 雑木林を歩けたばかりでなく、このトンボを見られたことで、わたしは満ち足りた気持ちになっていた。

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