あおもり昆虫記
ナツアカネ

 アキアカネに非常によく似ている。その違いを文字で表現するのはとうてい不可能なほど似ている。昆虫の本には、「日本の赤トンボを代表するアキアカネとナツアカネ…」という表現が非常に多い。ほとんど惰性で書いているんじゃないの?と思いたくなるほどこの表現が多い。いわゆる“慣用句”になっている。

 しかし、わたしは、この表現はおかしいと思う。たしかにアキアカネは、非常に多いのでそういう表現をしてもまったく異論はない。しかし、ナツアカネは西日本ではわりあい普通に見られるが、北海道では産地が局地的で、青森県でもあまりお目にかかることはできない。珍しいトンボと言ったほうがいいかもしれない。ナツアカネはじっさいは、代表的なトンボではないのだ。

 そもそも、ナツアカネという種が誕生した経過も妙なのだ。

 かつては、初夏から夏によく見られる薄茶色をした未熟個体の赤トンボたちの総称として「夏アカネ」という言葉が使われていた。つまり夏アカネは、種名ではなく、いわゆる俗称だったのだ。

 しかし戦後、トンボの再分類がされたとき、Sympetrum darwinianumという種にナツアカネの名が引き継がれたのである。このような命名の経緯をみても、およそ日本を代表するトンボとは言えないのではないだろうか。

 さらに名にこだわるが、どうもこのナツアカネの「ナツ」が気になる。引っ掛かる。もちろん夏にいるのだが、そのときは未熟な薄茶色。赤くなるのは秋になってからだ。これは、アキアカネについてもまったく同じことがいえる。つまり、アキとナツの区別がないのだ。ナツという名を抱く必然性がまったくないのだ。

 さて、ナツアカネは成熟すると美しい赤に染まる。腹はもちろん、胸や顔まで真っ赤になり、体全体が赤一色。中途半端に腹だけ赤くなるアキアカネなんてメじゃない。“ミスター赤トンボ”の称号をナツアカネにあげたいくらいだ。いや、勝手にあげちゃおう。

 ナツアカネの未熟個体はアキアカネのように避暑のため山へ移動せず、水辺を離れて林間や草地ですごすだけという。姿は非常に似ているが、行動はまったく違うところが面白い。なお、赤く色づいたナツアカネは解熱剤として民間薬に用いられ昭和40年初めごろま

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