あおもり昆虫記
アカエゾゼミ

 エゾゼミの黄色の模様を赤褐色にしたのがアカエゾゼミだ。遠くから見ると、全体が赤が強い褐色に見える。エゾゼミは里の松林や低地のブナ林にいるが、アカエゾゼミは、自然度高い山のブナ林の住人だ。

 1995年の8月、取材のため日帰りで白神山地の核心部に入った。西目屋村の暗門滝をよじ登り、沢をさかのぼって鯵ヶ沢町内に入り、赤石川流域で取材をした。長い距離を歩かなければならないため、帰途、暗門滝を下るころには薄暗くなり、暗門遊歩道を戻るときには刻々と暗さを増していた。

 そのとき、なぜが巨木に止まったセミがギーと鳴き始めた。近づいて見たら、なんとアカエゾゼミだった。セミというと盛夏の日中、精力的に鳴くイメージがあるが(ヒグラシは例外)、なぜ暗くなってから鳴くのだろう…そんな不思議な気持ちを抱いたことをよく覚えている。

 が、アカエゾゼミの“夜問題”は、これだけに終わらなかった。

 同じ年の9月初め。これも白神山地の追良瀬川に行ったときのことだ。川岸にテントを張ったのだが、天気予報に反し、運悪く猛烈な雨が降り続いた。小石が天から降ってくるような強烈は雨。それが何時間も延々と続く。とても寝てはいられない。川の水位はどうなっているのだろう、帰れるのだろうか、としょっちゅう川の様子を見に行った。

 その夜中。午前2時ごろだったろうか。テントの脇の足元の草むらで突然、「ギ、ギー」とセミが鳴いた。ヘッドライトを音の方向に当ててみたら、なんとアカエゾゼミだった。真夜中にセミが鳴くなんて。それも豪雨の真夜中にセミが鳴くなんて。かなりの驚きだった。わたしにとってアカエゾゼミはなぜか“夜のセミ”のイメージなのだ。

 その翌日。川は大増水した。川幅いっぱいに濁流が怒り狂ったように逆巻き、激流となって流れる。絵に描いたような鉄砲水。生還は困難を極めた。

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