あおもり昆虫記
キアシナガバチ

 東奥日報社弘前支社に勤めていたとき、借家の玄関わきに1本のザクロの木が植えられてあった。もっとも最初からザクロ、と分かったわけではない。鮮やかな朱色の花をつけ、その花が散り、実が膨らんできてからようやく、この木がザクロであることを知った。木に成っているザクロを見たのは、これが初めてだった。

 ザクロの実は人肉の味がする、とよく本に出ているので、熟したころ試してみた。まずかった。肥料もやらず剪定もしていないのでおいしいわけがないが、「フーン、これが人肉の味か」と妙に感心したりもした。とはいってもわたしは人肉を食べたことがないので、このザクロの味が本当に人肉と似ているのか、確かなところはもちろん分からない。

 初夏、ザクロの技にキアシナガバチ(黄足長蜂)が巣をつくっているのを見つけた。8月上旬、その単に数匹の蜂が止まっていた。雨で巣が漏れたらしく、蜂は巣の水分を吸っては外に吐き出していた。蜂が水分を吐き出す時、口からこぼれる水滴は、どきっとするほど美しく、あやしく光り輝いていた。

 そして1週間後。なにげなく巣を見て、思わず声を上げそうになった。なんと巣が蜂だらけなのだ。六角形の部屋から次々生まれた蜂がうごめき合っていたのだ。

 晩秋には、このうじゃうじゃの中の女王蜂1匹だけが生き残り、屋根裏などでひっそりと冬を越し、翌春、新たな巣をつくり産卵する−というようになるはずだった。しかし、そうはならなかった。

 日曜日の午前。近所の悪ガキどもが騒ぐ声がした。石や棒きれが家に当たる音がし、ガキどものキンキン声のボルテージは上がる一方。とうとう我慢できなくなり、外に出てコラッ!と一喝した。クモの子を散らすようにガキどもが逃げていったあとに、無残に踏みつけられた蜂の巣だけが残っていた。それを見てわたしは完璧に逆上した。が、オレがガキのころも同じことをやったよな、とふと思い出し「うーむ」とひくくうなった。

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