あおもり昆虫記
セイヨウミツバチ

 セイヨウミツバチ(以下ミツバチ)は家畜なんだそうだ。

これを聞いて、わたしは少なからずショックを受けた。養蜂の「国の所管」は農水省、県は畜産課が担当する。「分類上、中小家畜。たまたま体が小さいだけですよ」と畜産課の人から説明を受けたわたしは、ただただ「ふ〜ん」を繰り返すだけだった。

 青森県内の養蜂業者は95人、業者以外で蜂を飼っている人が65人。蜂群数は7610群(数字はいずれも1985年のデータ)。つまり、ミツバチの“箱”が7610個ある。養蜂業者には定置業者と花を求めて全国を回る移動業者の二通りあるが、青森県には定置業者が多い。養蜂専業者は少ない。1984年、青森県に入った他県の養蜂業者は304人。外で見かける養蜂の箱の4分の3は県外業者のものだ。

 蜜源で最上級はレンゲ。以下アカシヤ、トチ…と続く。本県はアカシヤ、トチが中心だ。リンゴ園でもハチの箱をよく見かけるが、リンゴ農家が人工授粉のため業者に依頼する例が多い。だが、リンゴの花の蜜は濁りがあり、品質的には落ちるという。県内で生産されるハチミツは144トン。全国の生産量の2%でしかない。

 1983年の春。わたしは弘前市船沢のリンゴ園でミツバチの箱が置いてあるのを見た。この日、昆虫の写真撮影が目的で車を走らせていたため、「たまにミツバチの写真でも…」と軽い気持でハチの出入り口にレンズを向けた。

 シャッターを1回切った時、耳に強烈な痛さを感じた。一瞬、何が起こったのかわからなかった。が、すぐミツバチに刺されたのだ、と気が付いた。じきに痛みはとれる−とタカをくくっていたが、軽くなるどころか痛さは増すばかり。

 思わずかがみ込んでしまった。そのうち頭の中がボーッとし、心臓の鼓動が早くなった。ふと「このまま死ぬのかな。でもミツバチに刺されて死ぬのはカッコ悪いな」との思いが頭をよぎった。その後、耳に痛痒いシコリができ、1カ月後ようやくシコリがとれた。

 さて、ミツバチは、ハチの仲間では最も進化している、といわれる。女王の寿命は3−5年で、この間多いもので30万粒以上産卵する。雌雄の産み分けができる。受精卵は雌に、不受精卵は雄になる。この現象は巣を作るハチ類に共通している

 ミツバチは1876(明治9)年にアメリカからイタリアン種が輸入され近代養蜂が始まった。セイヨウミツバチが日本に入ると、在来種だったニホンミツバチはどんどん姿を消していった。その原因はセイヨウがニホンの巣に侵入し、集めた蜜を一滴残らずかすめ取り、ニホンが全く無抵抗だったから、といわれている。この写真に写っているミツバチはセイヨウミツバチだ。

 呑気そうにみえるニホンミツバチだが、スズメバチから攻撃を受けたときの対応の仕方はなかなかしたたかだ。攻撃を受けたとき、ニホンは平静を装い、十分手元に引き寄せたあと、すきを見つけて集団で逆襲、団子状に群がってスズメバチを包み込み、それぞれの体温を上げてスズメバチを蒸し殺してしまうというからすごい。このため1巣が玉砕することはない。だから山奥でも自力で生きていける、という。

ところがセイヨウは、1匹ずつ勇敢に立ち向かってあえなくかみ殺され、揚げ句に1巣全員が討ち死にしてしまう。セイヨウは自力では生きていけず、人が用意した巣(飼育箱のこと)でなければ生きていけないのだ。つまり、セイヨウは人に依存して生きているのだ。セイヨウがスズメバチに玉砕戦法で挑むのは、なにも直情径行で無策ということではない。ヨーロッパにはミツバチを襲うスズメバチがいないため、防御策を身につけていないからだという。

 ニホンミツバチとセイヨウミツバチ。両者の違いは興味深い。

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