あおもり昆虫記
クマバチ

 クマとは、もちろん熊の意味である。生物で“クマ”と名がつくと、たいていは勇壮なものが多い。その代表的な例はクマタカであろう。このワシタカ科の巨大な鳥は、“クマ”という接頭語をいだくに十分な風格を持っている。

 クマタカよりやや小型のワシタカでハチクマという名のものもある。ハチクマが鳥でクマバチが虫とは、いかにも面白い。わが国に生息するキツツキ科の中で最大の鳥はクマゲラだ。本州では、白神山地が生息地として知られる。大きく真っ黒な怪鳥で、まさに“クマ”をいだくにぴったりの鳥だ。

 虫ではクマバチだ。ずんぐりむっくりの大きなハチで、黒光りする毛がもしゃもしゃ…。“クマ”と呼ぶのに全くふさわしい。いかにもおどろおどろしい容姿をしているが、このクマバチ、実はミツバチの仲間に属している。童話に出てくる“ミツバチマーヤ”と近緑なのである。

 ところが、名前がいかめしいものだから、しばしば誤った認識をされている。わたしが東奥日報社弘前支社勤務だったころ読者から「クマバチに襲われた」と電話を受けたことがある。この獰猛なハチは、クマバチではなくスズメバチだったのである。新聞の小さな記事に「こんな大きなクマバチの巣が見つかった」と出ているのを時々見かけるが、それもスズメバチなのだ。クマバチは、花の蜜をなめるおとなしいハチ。気は優しくて力持ち−といったところだ。

 春の弘前公園。観桜会が終わってちょっとたったころ、三の丸のピクニック公園に行ってみよう。芝生の上にゴロリとあおむけになり空を見上げてみよう。すると、小さな石つぶてのようなものが、ビュッと視界をよぎるはずだ。しばらくすると、また飛んでくる。時々、ホバリング(空中静止)する。ブーンという勇ましい羽音も聞こえる。クマバチだ。昆虫離れした勇ましさだ。やっぱりこの虫の名には“クマ”がふさわしいな、と思わず大きくうなずいてしまう。

 このパトロール飛翔やホバリングをしているのは雄で、一種の縄張り行動と考えられている。パトロール中、縄張り侵入者を発見すると、猛烈な勢いで追いかける。自分よりはるかに大きい虫や小鳥にも猛然と突っかかっていくこともある。追飛の際の瞬間最高速度は時速50−60`にも達する、という。通常は1秒間に約200回も羽ばたいて飛翔する。すさまじいパワーだ。

 クマバチは、体が大きいが卵も大きく、卵の長さは13ミリもある。昆虫のなかで最も大きい卵といわれている。

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