あおもり昆虫記
ムネアカオオアリ

 青森市の野内川上流。特に理由はないが、わたしはかつて、毎年のようにここに足を運び、そして、決まった岩に腰を下ろして休んだものだった。さらに付け加えると、決まってここでたばこを吸い、2メートルくらい先の倒木をぼんやり眺めるのが“お約束のパターン”だった。

 ある年、この倒木の上でルリタテハ(チョウ)が止まったり飛び立ったりするのを見て楽しんだ。その翌年も倒木の上に虫がいた。今回はチョウではなかったが、かなり大きい。一瞬、ハテナマークが頭をよぎったが、日本最大のアリであるムネアカオオアリの雌の羽蟻とすぐ分かった。庭先にごく普通にいるクロヤマアリの二倍はゆうにある。

 羽を着けているということは、結婚シーズンを意味する。辺りを見回すと、羽蟻がいっぱいいる。“吉日”に羽を着けた雄アリと雌アリが空中で交尾するアリの結婚。羽を着けたアリが大発生する光景は壮観だ。

 さて、近くのフキの葉の上にも羽蟻がいた。様子が変だ。羽が1枚しかないのだ。よく見ると、3枚の羽がフキの葉の上に落ちている。アリは、身をよじっている(その様子がこの写真)。足の動かし方も変だ。

 少し眺め、ようやく合点がいった。アリは羽を落とそうと懸命の努力をしていたのだ。そして、最後の羽も抜け落ちた。

 アリは交尾が済むと、自分で羽を落とし、石の下や樹皮の下などに潜り込み新巣を造る−。知識はあったが、その現場を目撃したのは初めて。素直に感動した。

 ムネアカオオアリは、山地性で木の中に巣を造る。ちょこまか歩く庭先のアリと違って、歩き万はゆっくりおっとりしている。

 白神山地で、国の天然記念物のクマゲラの子育てを取材したことがある。クマゲラの父親と母親は、2時間おきに交互に飛んできて雛に口移しでえさを与えていた。

 えさの多くはムネアカオオアリだった。倒れたブナにアリが巣くって木の風化を早め、そのアリが今度は鳥のえさに! 厳粛な自然のメカニズムを見た思いがした。

>>写真はこちら

アリなどの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

HOME