あおもり昆虫記
ルリタテハ

 どこにでもいるわけでない。どこそこへ行ったら、必ず見ることができる、というチョウではない。数も多いわけではない。

 かといって珍しいチョウではない。そこそこ目にする。

 とはいっても、それほど多くないため、目の前にひょっこり現れると、珍しいチョウに出会ったような、かすかな胸のときめきを覚える。

 ああ、ややこしい。でも、ルリタテハはそんなチョウだ。そして、わたしの大好きなチョウの一つでもある。なんてったって、羽をばっと開いたときの美しさ、デザインのすばらしさったらない。少し渋めの大人の美しさ、とでも表現すればいいのだろうか…。

 ルリタテハ、クジャクチョウ、キタテハ、アカタテハの4種が、人里近くにいる中型のタテハチョウの仲間。クジャクチョウのようにど派手ではなく、キタテハのように地味ではなく、そしてアカタテハのように勇ましそうではないルリタテハが、子供のときからのお気に入りだった。

 出会う機会が多いわけではないので、その出会いは鮮やかに記憶に残っている。

 ミズナラの樹液をカブトムシと一緒に吸っていた青森市森林公園(1981年)、タニウツギの葉の上に止まり羽化したての鮮やかな瑠璃色を見せてくれた岩木町百沢(1987年)、アカマツの幹に止まりカメラのレンズが届かなかった七戸町奥羽牧場(1988年)、色がさめ羽が裂けた姿でミズナラの樹液を吸っていた平内町夜越山(1991年)…。

 そして1993年5月末の青森市野内川上流。虫探しに疲れて枝沢の岩盤の上に寝転がって休んでいたら、目の前の倒木にルリタテハがすいーっと舞い降りた。何度も何度も飛び立ち、その都度、正確に元の位置に舞い戻ってくる。その行動が面白く、わたしは飽きることなく眺め続けた。

 同じ行動を果てしなく繰り返すルリタテハをずっと眺めていたら、睡魔が襲ってきた。やわらかな日差しを浴びながら、わたしは知らぬ間に寝入ってしまっていた。繰り返し行動を見つめていたら、睡眠術にかかったのかもしれない。

 神秘のチョウ。あまり姿を見せない故に、わたしはルリタテハにあこがれてきた。が、あこがれのチョウが突然目の前に現れ、やたらに行ったり来たりしたため、わたしはすっかり調子が狂い、絶好のチャンスなのになぜか、カメラを向ける気になれなかった。

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