あおもり昆虫記
シータテハ

 長年目にする機会がなかったのに、ひとたび目にすると、続けぎまに遭遇する、ということは、もののいかんにかかわらず、ままあることだ。わたしにとって、シータテハがそれだった。

 このチョウは、県内にそれほど多くはないが、かといって珍しいわけではない。昆虫少年の標本箱にも必ず収まっている変哲もないチョウだ。しかしわたしは、1978年に、ぼろぼろのシータテハを撮影して以来、どういうわけかこのチョウにめぐりあえないできた。このチョウは、珍しいチョウではないが、いつ、どこへ行けば必ず見られる、というチョウではないなのだ。

 ところが1988年、どういう風の吹きまわしか、シータテハを3回も見る機会に恵まれた。1回目は4月下旬、青森市の雑木林で。黄色のキブシの花に、越冬からさめたばかりのシータテハとヒオドシチョウが並んでとまり、仲良く蜜を吸っていた。

 全く絵になる光景だった。間違いなく傑作写真が撮れるはずだった。が、撮影目的で雑木林に行ったのではないため、カメラを持っていなかった。なんという不運。久しぶりでめぐりあえたのに…。

 「しょせん、人生ってのは、こんなもんさ」と心の中で強がってはみたものの、無念であり残念であり、悔しくもあり、しばらくは情緒不安定だった。

 しかし、それから数日後、平賀町の春の山道で、日なたぼっこをしているシータテハを見つけ、フィルムに収めることができた。青森市で見た時より絵にはならなかったが…。そして秋。七戸町で、羽化したばかりの色鮮やかなシータテハの撮影ができ、思わず「今年はついているなあ。人生もまんぎらじゃないや」

 ところでシータテハの名は、後羽の裏に「C」の紋があることに由来する。ラテン語で表記される学名も「C-album」で、ラテン語辞典によると意味は「白いC」。ところが英語では「Comma」。白紋をCではなくコンマ「,」に見たてているのだ。

 まさに、所変わればナントカ、である。

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