あおもり昆虫記
ヒョウモンチョウ

 子供のころ、とにかく虫を殺した。見つけ次第採集し、標本にした。小学校時代、標本箱は、厚紙でできた菓子箱を自分で“改造”したものだった。標本にするだけでは飽き足らず、羽をむしったり、足をもいだり、はたまた足、胸、腹をばらばらにしたり、とありとあらゆる“解剖”を行った。

 もっともそれは、現代っ子に見られるストレスのはけ口のためではなく、純枠に好奇心からだった。ある意味では、虫はおもちゃだったのだろう。当時は、テレビもゲーム機もない時代だったから。

 このような、いまの学校の先生が眉をひそめそうな行為を繰り返しながら、虫を知っていった。文字通り肌で知っていった。

 虫を殺すことから長らく遠ざかっている。一つには、引っ越し稼業をしているため、標本箱などというぜいたくなものを持てないことによる。いま一つは、虫を殺すことに飽きたためだ。現在は、カメラで虫の姿を“採集”するだけにとどめている。その結果、うまく表現はできないが、虫とわたしの間に一種の“隔り”ができたような気がしている。

 初夏の岩木山ろくの草原。わたしはここが大好きで、年に数回足を運び散策するのを楽しみにしている。わたしに、山ろくの初夏の到来を告げてくれるのはヒョウモンチョウだ。全国的には分布が限られたチョウだが、岩木山麓では、けっこう普通に見られた。鮮やかな橙色の地に黒い点々。動物のヒョウの模様を見立ててこの名がつけられた。

 いつものように草むらを歩いていたら、足もとの草にヒョウモンチョウがとまっているのが目に入った。近づいても逃げない。はねは非常に新鮮。羽化したばかりで、はねの脈が固くなるのをじっと待っていたのだった。飼育ならともかく、自然界で羽化を見る機会はあまり無い。かすかな興奮を覚えながらシャッターを数コマ切った。

 出来上がった写真を見てびっくりした。成虫では1本のはずの口(ストロー)が2本に分かれていたのだった。羽化したての時は分かれていた口が、体が固まるとともに1本になる−。この事実をわたしは、写真で初めて知った。と同時にこんな思いが頭をかすめた。

「子供の時、盛んに虫を解剖したが、チョウの口までは解剖しなかったなぁ」

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