あおもり昆虫記
ホソオビヒゲナガ

 虫たちを見ていると、どうしてこのような形をしているのだろう、と不思議に思うことがよくある。カブトムシのつのだって、クワガタムシの大きなはさみだって、尋常な形からはほど遠い。ハサミムシのお尻のはさみもエキセントリックだし、ハネカクシの上ばねが極端に短いのも変てこだ。

 このホソオビヒゲナガ(細帯髭長)は異形の虫の中でも極めつけの風変わりな虫だと思う。

 はねの長さは2cm前後の小さなガ。暗茶色のはねの中央に一条の縞が走る。これだけなら、何の変てつもない蛾だが、びっくりさせられるのは触角の長さだ。

 雄の触角は、前羽の長さのなんと3.5倍。雌でも1.5倍ある。そういわれても、ぴんとこないかもしれないが、写真を見れば驚かされるはず。それでもぴんとこなければ、実物を見ればよい。きっと「げげっ」と目をみはり「う〜む」とうなるに違いない。

 このわたしだって、ホソオビヒゲナガを見るたび「げげっ」「う〜む」を繰り返している。決して珍しい虫ではない。里山でよく見かける。日中、葉の上にちょこんととまっている姿を目にするが、小さな体に常識外れに長いアンテナを立てた姿はどことなくユーモラスで、見るたびに「ムフッ」とすこし笑いを漏らしてしまう。

 これほど長い触角があれば、飛ぶ時はどんな格好をするのだろう、という疑問が沸く。そこで、この写真を撮ったあと葉をすこし揺らし、いたずらをしてみた。あわてた彼(触角が長いから雄)は確かに飛んだ。長い触角を上にぴんと立てて。しかし、やっぱり触角が邪魔らしく、小さな羽を懸命にはばたいてもなかなか前に進まない。2本の長い触角が、スーッと横にゆっくり移動していくような感じなのだ。やっぱり、長い触角をもてあましているようだ。

 おかしなやつ−。

 こんな不自由な長大アンテナをどうしてつけているのだろう。高性能アンテナでいくら危険をいち早くキャッチしても、動きが鈍ければ自分で自分の首を絞めるようなものなのに…。

 が、この変てこりんなガが、長い進化を経て今でも存在しているということは、人間の浅知恵ではとうてい考えも及ばない利点が、この触角に秘められている、と考えるべきだろう。

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