あおもり昆虫記
モンシロチョウ

 「ちょうちょ ちょうちょ なのはに止まれ なのはにあいたら 桜にとまれ…」

 だれでも知っている唱歌。この歌のチョウはモンシロチョウだ。「なのは」は、菜の花ではなく菜の葉。モンシロチョウは、キャベツなどアブラナ科の植物を食草とし、葉に止まって卵を産むから、歌詞は理にかなう。

 が、モンシロチョウは桜の蜜は吸わない。だから「菜の葉に飽きたら桜に止まれ」は誤りだ。自然観察をしない作詞者が、机の上で思い込みで書いた詞ではないだろうか。

 わたしが子供のとき、どこの家でも庭で自家消費の野菜を作っていた。キャベツも作っていた。わたしの母もそうしていた。キャベツの葉は青虫のため穴だらけだった。この青虫は成虫になるとモンシロチョウになった。モンシロチョウは、人々が一番身近に感じるチョウだった。

 小学生のとき、庭の畑のキャベツについていた青虫を飼ったことがある。青虫はだんだん元気がなくなっていった。変だなあ、と思いつつ観察を続けていたらある日突然、青虫の体に米粒のような小さな黄色い粒々が数多く現れた。数匹飼っていた青虫のどれもに粒々が現れた。気持ちが悪くなったわたしは、全部捨ててしまった。

 本で調べたら、この粒々は寄生蜂アオムシコマユバチの蛹だった。ハチは生きた青虫に卵を産み、ハチの幼虫は青虫の生き血を吸いながら成長し、青虫が死ぬ直前、蛹になる。子供心に慄然となったことを覚えている。が、ハチのような天敵がいないとモンシロチョウは爆発的に増える。寄生蜂がいて自然のバランスが保たれているのだ。青虫も寄生蜂も自然の一員なのである。

 大昔、日本にいたシロチョウの仲間はスジグロシロチョウだったという。モンシロチョウはその後、栽培植物とともに日本に入ってきた。そして、林が畑に代わりアブラナ科植物が植えられるると、スジグロは追いやられ、モンシロの天下となった。

 しかし今、再びスジグロが勢力を盛り返してきている。モンシロの食草のキャベツ畑はビル街になったり、宅地になった。自分の屋敷でキャベツをつくる人もほとんどいなくなった。

 そして、高い建物が増えると、地上の日照量が少なくなった。これは、スジグロチョウの生育に適している環境だ。昔、スジグロが好きだった林は、今、“ビルの林”に置き換わったということだ。太陽が生命線だったモンシロは行き場を失いつつある。

 時はめぐる。音もたてず−。

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