あおもり昆虫記
ツマキチョウ

 「チョウは好きだけど、それ以外はちょっと…」。昆虫研究に一生懸命な人でもこんなことを口にしたりする。が、わたしは、昆虫であればなんでも好きだ。とは言ってもそこは人情。「特別に好きな虫」はいくつかある。このツマキチョウも、特にお気に入りの虫のひとつだ。

 端黄蝶。羽の端が黄色いチョウという意味だ。モンシロチョウを一回り小型にした感じで、白地の羽の先端にちょこんとある、黄色の紋がなんとも素敵。上品さが漂う。鍵型の曲がった羽の先端が芸術的ですらある。

 が、単にエレガントなだけのチョウではない。高さ1mの辺りを一直線に、それも速く飛ぶのだ。雌を探すためのようだ。飛ぶコースはほぼ一定しており、蝶道といわれる。この蝶道を直線的に何回も往復する。めったに花に止まらず、撮影は非常に苦労する。

 また、後羽の裏が、青海苔をまぶしたような模様になっており、羽を閉じてじっとしていると、周囲の草に溶け込み敵の目をごまかす、という木遁の術まで心得ているしたたかものだ。

 小学6年のとき、わたしは父親の仕事の関係で、弘前市和徳町に引っ越してきた。家の近くは田んぼで、雑木林や原っぱもあった。学校から帰ると虫網を手に雑木林や原っぱに出かけて昆虫採集するのが日課だった。5月ごろ、ここにツマキチョウが現れた。このチョウが飛んでいるとき、黄色い紋が鮮やかに見えた。子供心に「なんて美しいチョウなんだろう」と思ったものだった。

 あれから40年。ツマキチョウがいた原っぱは宅地に変わった。雑木林も田んぼも宅地に変わった。それでも、子供のときに脳裏に焼き付いた「黄色い紋」はいまも鮮やかによみがえる。わたしの心の中ではツマキチョウは、まだ原っぱで、白い羽に黄色の紋を見せながら飛び続けている。

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