あおもり昆虫記
スジボソヤマキチョウ

 普通にあるべきものが無いと、なんとなく落ち着かないものだ。情緒が不安定になる。例えば何だ、と問いつめられると困るが…。

 チョウだってそうだ、と思う。普通は模様がついている。そして、たいていは羽の縁は何がしかの色でふちどりがされている。一見真っ白に見えるモンシロチョウにだって、黒い紋がついている。

 が、どこの世界にも例外というものがある。チョウでは、このスジボソヤマキチョウが、それに当たる。羽の裏も表も真っ黄色。わずかに羽の中央部に小さなだいだい色の点があるだけ。色のメリハリが全く無い。

 低山地でこのチョウに出会うと、どきっとする。とにかく目立つ。無地の黄色い紙が、風に吹かれ、ひらひら舞っている−そんな印象を受ける。時として、なんて不気味なチョウだ、と思う。あるべき模様が無いから、気持ちが不安定になるのかもしれない。

 また時として、なんて簡素なチョウなんだろう、と感心したりもする。模様が無いから清楚な乙女に見えるわけだ。その時の気分で、このチョウを見る目が変わるとは、人間は身勝手だ、とつくづく思う。

 ところで、この“清楚な乙女”だが、乙女と呼ぶにはふさわしくないほど長生きする。新しい成虫は7月ごろから現れる。しばらく活動したあと、暑さを避けるため真夏に夏眠する。9月ごろから再び飛び、成虫のまま越冬する。春になってから、またまた活動を再開し、卵を産む。成虫のまま1年近くも生きる“長寿チョウ”なのである。

 が、越冬から覚めた乙女は、見るも痛々しい。美しさを誇った自慢の黄色は抜けて白っぽくなり褐色のシミが多数はねにあらわれる。乙女からおばあさんに。いっぺんに老け込んだような…。美しすぎるゆえの罪と罰か? いや、そんなことを考えては、このチョウに気の毒というものだ。

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