あおもり昆虫記
ヒメシロチョウ

 可憐なチョウだ。語彙が不足している、とそしりを受けてもいい。可憐、と言うしか適切な言葉が頭に浮かばない。困ったものだ。

 モンシロチョウを“二回り”ぐらい小さくしたチョウ。モンシロチョウのような元気な飛び方とは違い、ヒメシロのそれは、ゆっくりでたおやか。むしろ弱々しいくらいだ。

 真っ白な羽の先端に、丸い黒紋があるだけ。シンプルな“デザイン”がたまらなく魅力的だ。ひらひらと飛んでいるとき、この黒紋がくっきり見える。わたしはそのたび、どういうわけか平安貴族の眉墨を連想する。

 多くはないが、珍しくもない。いつでも写真を撮れる、と思い始めたのは、いつのことだろう。あれからずいぶん、年月がたった。

 時折目にするのに、なぜ写真を撮らなかったのか。いや、撮れなかったのか。なかなか止まってくれないチョウであることが、最大の理由だ。すぐにでも止まりそうな情けない飛び方をするくせに、これがしぶといのなんの。わたしは簡単に根負けし「まっいいか。いつでも撮れるからな」とあきらめる。この繰り返しだった。

 ところがある年、青森市と平内町で、このチョウが食草のツルフジバカマに群がっているのを見つけ、今までの苦戦がうそのように、楽に写真を撮ることができた。あの苦戦の年月は、いったい何なんだったのだろう…。

 考えてみれば、昆虫を探すとき、まず食草を見つけるのがイロハのイ。基本中の基本だ。このチョウについては長い間、なぜそれを考えつかなかったのだろう。自分でも信じられないくらいの間抜けぶりだ。

 でも、知っているはずのイロハのイを、なぜかその時だけ考えつかない−ということは、世の中、よくあることだ。というより、わたしはこれ以外でもこれまで何度も経験した。油断や慣れなのかもしれない。あるいは単なる間抜けなのかもしれない。趣味の世界では笑って済まされるが、仕事や車の運転では大事につながる。自戒、自戒、だ。

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