あおもり昆虫記
アカシジミ

 チョウ・ファンの中で最も人気があるチョウはミドリシジミの仲間だ。金緑色に輝く羽は限りなく美しく、宝石にも例えられる。宝石に興味のないわたしの目にもその輝きは蠱惑的に映る。

 青森県では、7月上旬から8月中旬まで、さまざまなミドリシジミが入れ代わり立ち代わり姿を現す。きらびやかなミドリシジミの仲間の中で一番早い時期に現れるのが、このアカシジミだ。ミドリシジミの仲間でありながら、なぜ「赤」なのだ、と追求されると困るが、生物分類学的にミドリシジミの仲間とされている。

 わたしは中学生のころ、ミドリシジミの美しさにひかれ、各種ミドリシジミが生息している岩木山に通ったものだった。そしてアカシジミを見ると、「いよいよミドリシジミの季節になったなあ」と子供心にもうれしい気持ちになったものだった。

 わたしの中学生のころといえば1960年代前半。そのころ、アカシジミは岩木山に普通にいた。あんまりいっぱいいるので、その年初めて見たときは興奮してもすぐに慣れ、そのうち意識にとめなくなってしまう存在だった。この写真を撮った1983年初夏も岩木山にたくさんいた。写真も簡単に撮れた。

 ところが1998年のある日、弘前市のチョウ研究家TKさんから意外な話を聞いた。「主産地岩木山のアカシジミが、ほとんど見られなくなった」というのだ。15年ほど前まで、あんなにいたのに…。わたしはその15年間、岩木山に足を運んでいなかったため、TKさんの話を聞いて腰を抜かすほど驚いた。

 アカシジミがたくさんいた15年前と現在の、岩木山の生息場所の環境は、わたしの目にはあまり変わっていないように見えた。それなのに、なぜいなくなったのだろうか。でもそれは、わたしがマヌケだから環境の変化が見えないだけだ、と思う。原因が分からないから、言いようのない不安を感じる。そして、アカシジミに限らず、人間が分からないうちに生物の生息環境をどんどん変えていっているのではないか、と思う。

 アカシジミは人間に「何か」を警告しているはずだ。しかし、人間はそれが分からない。それが分かると、人類を含め生物が生きていくヒントのひとつになるのではないだろうか、とふと思う。

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