あおもり昆虫記
ウスイロオナガシジミ

 穏やかなチョウである。いや、もの静かなチョウ、のんびり屋さんのチョウ、といった方が適切かもしれない。

 なぜ冒頭、こんなことを書くのか−。それは、チョウは普通、すばしっこくて、やたらに落ち着きないものだからだ。もっとも、落ち着いて羽を休めていると、天敵に簡単につかまるので、そうもしていられないのだが…。チョウは、わたしを天敵と決めつけているらしく、ちっともじっとしてくれない。ある年の5月下旬、青森市の郊外でウスバシロチョウとツマキチョウの撮影にまるまる4日間費やしたが、4日間ともチョウたちに逃げまくられ、ついに1コマもシャッターを切ることができなかった。目の前で、わんさか飛んでいるのに…。

 わたしは、こんな目にばかりあっているから、ウスイロオナガシジミみたいに、のんびりしているチョウに出合うと、ほっとする。

 草に止まっているウスイロオナガシジミの姿を写真に撮ろう、とカメラを近づける。そーっと、そーっと近づく。チョウはじっとしている。「わたしは、あんたの敵じゃないからじっとしているんだよ」と心の中でつぶやきながら、シャッターを何回も切る。

 相変わらずウスイロオナガシジミはじっとしている。そのうちわたしは、あまりののんびりさかげんに拍子抜けして、「たまには動いてみろや」と軽く息を吹きかけ、いたずらをする。するとチョウは、ヘロヘロという感じでへたくそに飛び、近くの草にすぐ止まって再びじっとする。早朝に見ても、日中に見ても、いつもこんな調子。本当にのんびりしているチョウだ。

 北海道や東北にいるチョウで、南に行くにつれ珍しくなるチョウだ。もともとあまり多くないチョウだが、1970年ごろから全国で、数が激減している、と警鐘が鳴らされている。個体数が激減した樹林性のチョウの中でも、このウスイロオナガシジミは一番減った、といわれる。最大の原因は、幼虫の食樹のミズナラやカシワが各地で伐採されているため。チョウ研究家の中には、のんびりして採集されやすいことが激減の一因−という人もいる。青森県内では、このチョウをまだしばしば見ることができる。いつまでもチョウがすめる自然を、と願わずにいられない。

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