あおもり昆虫記
ベニシジミ

 ギシギシという植物は、畜産農家にとって、大変な厄介物らしい。

 青森県畜産課に電話できいてみた。「ギシギシは、どうして嫌われているのですか」 と。

 電話の声は、さも憎々しげに語り始めた。「ギシギシだって?しまつにおえないやつですよ。牧草地にどんどん入り込み、牧草が生える面積が、だんだん少なくなっていく。おいしくないのか、牛も食べない。そもそも栄養が無い。古い牧場ほど多い。とにかく、驚くほど生命力が旺盛だ。根からも種からも増える。種は何十年も生きている。土を起こすと、何十年も前の種が発芽する」。話しているうちに、電話の主は、あきれたような口ぶりになってきた。雑草の逞しさとは、まるでギシギシのことを言っているようだ。

 その嫌われものを食草にしているのが、可愛いらしいペニシジミだから面白い。平地のどこにでもいる全く普通の小さなチョウだ。平賀町の友人YKさんは「ベニシジミがなかなか見られないチョウだったら、その美しさだけでマニアが目の色を変えるに違いない」 と言っているが、わたしも同感だ。よく見ると、それほど羽の赤が美しい。

 人間の目は不思議だ。いかに美しいものでも、あまりに普通なものであれば、見向きもしない。半面、珍蝶であれば、全然美しくなくてもマニアは血眼になる。この“定理”は世の中全般に通じることで、いかに美しくても、タダ同然で手に入るものであれば、人は見向きもしない。ベニシジミは、このように「美」が正当に評価されていない可哀想なチョウじゃないかな、と思う。

 このチョウは、季節によって羽の色が少し変わり、春に現れるものは赤の部分が多く、夏型は赤の部分が黒っぽくなる。三重県のアマチュアのレポートによると、幼虫期の日照時間が13時間以下では春型になり、14時間以上になると夏型が出るという。普通種とはいえ、その生態はなかなか興味深い。

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