あおもり昆虫記
トラフシジミ

 トラフシジミ(虎斑蜆)。トラの毛皮模様というか、阪神タイガース球団旗模様というか、はたまた工事中の標識模様、カミナリさんのパンツ模様…のこのチョウは、わたしにとって“ちょっと気になるやつ”的な存在だ。「恋しているわけじゃないけど、無視もできない。なんか分からないけど、ちょっと気になるカレ」というかんじの存在なのだ。

 なぜなんだろう。初めて考えてみた。ほどなく理由が分かった。

 それは、珍しいわけじゃないが数が多くないという、位置づけが曖昧なチョウだからだった。だから、気になるのだ。だから、心に引っ掛かるのだ。

 子供のときに見た、路傍の花に止まっていたトラフシジミの姿が鮮やかによみがえる。そして1975年ごろ、青森市駒込地区で舞う姿を見たこともよく覚えている。1980年ごろの真夏の天気の良い午後、弘前市禅林街で取材していたら、墓石の間からいきなり飛び出してきたのには驚かされた。1988年には、青森市野内川の林道に止まり、水を吸っているのを見たっけ…。

 その出会いは、いつも突然やってきた。そして、出会いの一コマひとコマが、色あせず記憶のフィルムに残っている。数が多くないチョウだから印象深いのだ、と思う。しかし、数が多くないチョウは他にもある。なぜトラフシジミだけが強く印象に残っているのだろう…。やっばり縞模様が強烈で、わたしの記憶をつかさどる脳細胞を刺激しているのだろうか。

 昔、トラ年の年賀状にトラフシジミの絵を描き、しゃれてみたことがある。それほど意識の底にあるチョウだ。出会いの機会は少ないのに。

 ところで、このチョウの幼虫は、ウツギなどの花を食べて育つ。花が終わるまでに育ち切るには、かなりせっかちでなけれはならない。

 福島県では、リンゴの花も食べることが確認されている。何かの毛虫が花を食べ荒らし、リンゴの収穫量が著しく減ったため、頭に来た生産者が幼虫を育ててみたら、トラフシジミが羽化したという。幸い本県ではこのような話を聞かない。もしリンゴの害虫であれは、好意的な“気になるやつ”ではなく、憎しみを持った“気になるやつ”になるだろう。

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