あおもり昆虫記
ジョウザンミドリシジミ

 昆虫の中でチョウの愛好家が最も多い。そのチョウの中でも通称ゼフィルスと呼ばれるミドリシジミ類が人気の中心だ。理由は簡単。美しいからだ。雄の表の羽は金緑色の鱗粉に覆れている。文字にして書くのも気恥しいが、“生きた宝石”、もしくは“生きたエメラルド”といった、いかにも表現力不足の例えが、ミドリシジミ類を最も良く言い表している。

 1983年。わたしはこの年、ミドリシジミ類の写真を撮ろう、と心に決めていた。場所は、中学、高校時代に多くのミドリシジミ類を採集したことがある岩木山麓。ミズナラ、コナラが主な樹種だ。これらの木の若葉を餌にしているとするミドリシジミ類が多い。

 日中、夕方は仕事があるため、撮影時間は早朝。朝5時に布団を抜け出し、5時半から2時間、岩木山麓でミドリシジミ類との対面を楽しむ。帰宅してから急いで朝食をとりそれから出社する−そんな繰り返しが、この年の7月上、中旬、ほとんど毎日のように続いた。山の目覚め、チョウの目覚めの中に身を置く。何ともいえない心落ち着くひとときだった。

 そんなある日、思いもかけない光景がわたしを待っていた。陽が射し始めたころ、ジョウザンミドリシジミが、まるで“湧く”ように、次から次へと飛び出した。まだ気温は低く、チョウの体は温まっていない。だから、わたしの胸の高さのあたりを比較的ゆっくりチラチラ飛んでいる。その数約50匹。2〜3匹ずつ絡み合うように飛んでいる。そのすべてが雄だった。金緑色の羽が朝日を受けてキラキラ輝いている。

 気が付いたらわたしは、ジョウザンミドリシジミの群舞の中に呆然と立っていた。こんなに多くのミドリシジミ類が飛んでいるのを見たのは初めてだった。わたしはすっかり興奮していた。

 ミドリシジミ類の雄が2〜3匹もつれ合って飛んでいる状態を卍(まんじ)飛翔と呼ぶ。縄張い争いをしているのだ。しかし、あの群舞にはどんな意味があるのだろう。縄張りを争っているとはとても思えない飛翔だった。この年、群舞を見たのは、これ1回きりだった。そして以後も、このような壮観な光景を見ていない。

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