あおもり昆虫記
イチモンジセセリ

 夏から秋にかけて、高原のアザミやコスモスの花の上で密を吸っている姿をよく見かける。山あいの集落だと、民家の庭の花の上でも見られる。セセリチョウの名前の由来はセセル(つっつくの意味)からで、イチモンジセセリのように花にたくさん群がりつついていることからきたのであろう。

 イチモンジセセリはあんまり普通に見られるため、青森県内でさぞ多く繁殖しているのでは、と思いたくなるが、実は違う。青森県内では繁殖できない−つまり冬を越せないのだ。

 では、なぜ、夏から秋にあんなに多く見られるのだろう、と不思議に思いたくなる。実は青森県内で見られるイチモンジセセリは、暖かい地方で冬を越し世代を繰り返しながら北上してきた個体なのだ。他県産まれのチョウたちなのだ。秋に卵を生んでも寒さで死に絶える“明日なきチョウ”たち。毎年、毎年繰り返されてきた行動。毎年、毎年冬に死に絶えるチョウたち。なんだか無常を感じる。

 幼虫は、稲の葉をつづり合わせ、つと状の住居を作るため、“稲つと虫”の名がある。幼虫は昼間つとの中にいて、夜になるとそこからはい出し、葉を食べる。ついた株の被害は目立つため稲の害虫として有名だが、知名度の割には被害は大きくない。これは、天敵の種類が多く、イチモンジセセリが爆発的に増えるのを自然調整で防いでいるためらしい、という見方もされている。

 謎の集団移動をするチョウだ。集団移動は主に秋に行われているようで、関東から関西にかけてよく観察されているという。東日本には無い現象だ。移動は8月下旬から9月下旬にかけて第3化の成虫が昼間行うということで、これまで観察された移動の中で最も規模が大きいのは1952年の神奈川県での例。この時は、移動中の個体間の間隔が前後80cm、左右40cm、集団の長さは12km、幅5km、厚さ9.5mで、これを計算すると、なんと約18億匹が移動したことになる。う〜む、と、うなるしかない。

 また、大群で飛ぶときは、必ず西向きに飛ぶため、地方によってはこのチョウを「ニシドッチ」と呼ぶところさえあるという。なぜ西向きに飛ぶのか、なぜ集団移動は第3化の成虫が行うのか…。超普通種のわりに謎が多いチョウだ。いや、超普通種だからあまり調べられておらず、謎の部分が多いのかもしれない。

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セセリチョウの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

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