あおもり昆虫記
キバネセセリ

 セセリチョウの仲間は、蝶マニアの中でも人気がない。きれいな種類が少ないことと、ガに似ているのがその理由だと思う。もっとも、チョウとガの違いは、となると、これが案外厳密ではない。人が勝手に判断しているわけで、ガに似ているから、と嫌われているセリチョウにとっては迷惑な話だ。

 どこがガに似ているかというと、胴が太いわりに羽の面積が小さいことだろうか。重い胴体を小さな羽で空中に浮かべるためには、羽を何回も羽ばたかなければならない。速く飛ばないと、浮力を保って空中に浮いていることが出来ない。だから、セセリチョウの仲間は、一部の例外を除いてみんな、つぶてのようにビュッと速く飛ぶ。

 このキバネセセリは、セセリチョウの中でも極めつきの地味な色をしており、ガに雰囲気が近い。雄は、水を吸うのが好きで、林道の道端で吸水している姿をよく見ることができる。

 小泊村の林道を歩いていたとき、お尻からおしっこをしながら水を飲んでいたのを見たことがある。おしっこは、腹の端から、ポロポロポロポロ出てくる。美しい小さな玉が、次々に出てくる。チョウは動かない。口のストローで水を吸い続ける。

 チョウは、ある程度水が欲しくて吸水するのだろう。しかし、おしっこをしながらもなお水を吸い続けるということは、もはや水自体を必要としていないことを意味する。じゃあ、なぜ水を飲み続けるのか。それは、土から溶けだしているミネラルや土に混ざっている有機物を吸って、栄養を得ようとしているのではないだろうか。

 また、樹液や獣の糞、花の蜜、腐った果実などさまざまなものの水分も吸う。

 驚いたのは1993年7月、青森市郊外の後萢神社に行ったときのこと。神社拝殿の外側に古くて汚い畳が立てかけられていた。捨てられた畳だ。ふと見たら、1匹のチョウが畳に止まっていた。キバネセセリだった。キバネセセリは、捨てられていた畳に口のストローを差し込んでいたのだ。人の汗や垢などがたっぷり染み込んだ水分を吸っていたのだろう。チョウにとってこの水分は、なによりのごちそうだったに違いない。おいしかったに違いない。その証拠に、チョウはわたしが近づいてもぴくりとも動かず、一心不乱に水分を吸っていたのだから。

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セセリチョウの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

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