あおもり昆虫記
ヨツモンキヌバコガ

 一つの見方しか出来ないと、見えるものも見えてこない。だから、さまざまな見方をしなければ、多くのものが見えてこない。

 昔、通常の思考と全く違う考え方を水平思考とだれかが命名、日本中で流行した。が、言葉ははやったものの、国民が水平思考を身に付けたかどうかは、知らない。今では、だれも水平思考なんて言わないが、代わって複眼視という言葉が幅を効かせ、よく企業の社員教育あたりで使われている。「同時にさまざまな見方をすべきだ。そうすれば、より真実が見えてくる」ということで、特に報道記者には必要なことではある。

 虫探しでも、同じことが言える。

 わたしは、熱心な昆虫愛好家ではないから、虫の写真を撮るときはたいてい、ぶらぶら歩いているとき目に入った虫しか被写体にしない。登山しているときなどはもっと横着で、近くに現れた虫しか写真に撮る気がしない。登山でくたびれているときは、写真すら撮らない。撮ればいいのは分かっている。撮らなければ後悔するのも分かっている。それでも撮影する余裕がない。

 しかし、虫の生態は幅広い。目に付くものばかり見ていると、当然のことながら、目に付かない虫を見過ごすことになる。そして、目に付かない虫の方が、目に付く虫より圧倒的に多いという、厳然とした事実がある。

 1993年から、猫の額よりまだ狭い庭で、虫の観察を続けている。草刈りを全くしない草伸び放題の庭に、どんな虫が来るのか調べている。毎日庭をのぞき、記録をノートにつけているが、これが実に面白い(さすがに最近は観察する余裕がないが…)。

 これまでと全く違う視点で虫を見ているため、今まで見たことがなかった虫が多く見られるようになった。このヨツモンキヌバコガ(四紋絹羽小蛾)もその一つ。本当に小さなガ。ちょっと見には、ガには見えない。1994年8月、ヨモギの葉の上にこのガを見つけた時は、ちょっと興奮した。ヨモギの間をチラチラ飛ぶ姿は、ガにはとても見えず、これまで見たことがなかった種類の虫に見えたから。慌てて家に入り、カメラにフィルムを入れている間、「まだいてくれよ」と祈ったものだった。

 このガは、春型には紋が無く黒一色、四つ紋があるのは夏型の印とか。ガのコレクターたちですら、それほど見ることのない種(だから珍種とは限らない)という。マニアにも注目されていないガ、あるいはマニアたちですら見えないガ、ということか。

 見方を変えれば、見えないものも見えてくる−金言である。

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