あおもり昆虫記
アゲハモドキ

 こどものときに買ってもらった図鑑に、アゲハモドキの写真が載っていた。ガなのに、ほとんどチョウと変わらない姿に驚いた記憶が鮮明に残っている。当時は、チョウとガは、明確に違う昆虫だと思っていた。だから、チョウにそっくりなガを見て驚いたのだった。

 ところがその後、チョウとガには明確な違いがないことが分かった。両者は、鱗翅目という仲間にくくられる、同じ仲間の昆虫だったのである。外国では、チョウとガを区別しないで、まったく同じ仲間として扱っているところもあるという。

 さて、このアゲハモドキという名は気の毒だ。ちゃんとした独立した種なのに、チョウのジャコウアゲハに似ているため、“モドキ”という不名誉?な名がつけられた。名づけ親は「チョウが一流。ガは二流」と考え、“モドキ”と命名したのだろう。

 一般に昆虫愛好家はチョウを愛すが、ガを蛇蠍のように忌み嫌い罵詈雑言を浴びせる傾向にあり、わたしは残念に思っている。学問上、チョウとガは同じなのに…。アゲハモドキ。この名に、日本人にありがちな権威主義がはしなくも額をのぞかせた、と考えるのは、うがち過ぎだろうか。

 アゲハモドキは、なぜジャコウアゲハに似ているのか。チョウの研究者は次のようにみる。ジャコウアゲハは、幼虫が毒のあるウマノスズクサを食べることから、体内に毒を持つ。このため、チョウを捕食する鳥はジャコウアゲハを食べるのを嫌う。無毒なアゲハモドキは、有毒なジャコウアゲハに似せることで、我が身の安全を確保しているといわれている。この、似せることは擬態といわれている。もっとも、アゲハモドキの意思で擬態しているわけではない。何億年もの進化の歴史の中で、たまたまジャコウアゲハに似ていたアゲハモドキが今日まで種を保存している(生き続けている)、と考えるのが自然だ。

 こどものとき、図鑑でアゲハモドキを見てから約35年後。わたしは十和田市郊外の雑木林で初めてこのガを見た。こどものときの印象が強烈だったためか、初めて見たのにもかかわらず、戸惑うことはなかった。瞬時にアゲハモドキだと分かった。その第一印象は「あっ、図鑑とまるで同じだぁ」という、実にマヌケというか当たり前のものだった。

 カメラを向けてもじっと動かないため、楽々撮影することができた。そのうち、思い出したように飛び立った。その飛び方は弱々しく、すぐ近くの笹の葉の上に止まる。このガに似るといわれるジャコウアゲハの優美な飛翔とは全然違う。姿は似ても、飛翔までは“モドキ”ではなかったんだなあ、と夏の雑木林で、らちもないことを考えた。

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