あおもり昆虫記
イカリモンガ

 ガとチョウの違いってなんだろう。一般に言われていることを以下に列記してみる。(1)チョウは羽を閉じて止まるが、ガは羽を開いて止まる(2)チョウは昼に行動するが、ガは夜に行動する(3)チョウの触角は棍棒型だが、ガの触角は櫛型…。しかし、それぞれ例外がある。どこがどう違うのだ! と厳しく追及されると明確な答えはない。それもそのはず、ガとチョウは同じ仲間なのだから。

 とはいっても、日本の分類学では、チョウとガを無理に分けている。その結果、チョウはひたすら愛でられ、ガはひたすら嫌われる、という構図ができあがった。チョウに関する研究、書籍、図鑑は膨大な数にのぼるが、ガのそれは寂しい限りだ。ガの種類はチョウの何倍も多いはずなのだが、なかなか名前を調べられる状況にないから、ますますガに対する興味が薄れる。虫に親しむ原点は、正確な名を知るところから始まる、と思うのだが…。

 ガとチョウの境界線は実は曖昧だ、と前述したが、その境界線上にある代表格が、このイカリモンガではないだろうか、とわたしは思う。

 まず、止まるとき、きちんと羽を閉じる。その姿はチョウそのものだ。触角は棍棒型ではないにせよ櫛型でもない。ジャノメチョウの触角のようにすらりとしている。夜ではなく日中飛び回り、花によく止まる。まるでチョウと同じ行動だ。しかも、飛び方は、それこそ、チョウとまったく同じだ。言葉で表現するのはとても難しいが、チョウにはチョウらしい飛び方があり、ガにはガらしい飛び方がある(これは、わたしの主観)。しかし、このイカリモンガの飛び方は、まったくチョウそのものなのだ。

 林道などでイカリモンガが飛んでいるのを見ると、まず最初に「あっ、チョウだ」と思い、カメラをセットする。次に「あれ? 何のチョウだろう。見たことがないチョウだ」と思い、体に緊張が走る。そして止まったところを見て「なあんだ、イカリモンガか」となる。それほど“チョウらしい”ガだ。イカリモンガを見るたび、チョウとガを分けることの無意味さを思う。

 こどもたちが昆虫採集を始めたとき、一番頭を悩ますのがイカリモンガといわれる。絶対にチョウだと思って採集してきてチョウ図鑑で調べても載っていない。「図鑑に載っていないから新種のチョウなのだろうか」と頭を悩ますわけだ。そう思うのも無理はない。

 イカリモンガは里山などどこでもいる虫だと思っていた。だが、この文を書くにあたって観察ノートのイカリモンガの項を見てみたら、ひとつの傾向があることに気づいた。イカリモンガを撮影したり目撃した場所は、小泊村冬部川、鯵ケ沢町恩愛沢、蟹田町清水股沢、青森市野内川、深浦町吾妻川…。いずれも沢沿いの林道だった。興味深いことである。

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イカリモンガ〜カギバガ・フタオガの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

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