あおもり昆虫記
ヒメジャノメ

 いまの学校ではどうなのか知らないが、昔の学校では授業中、窓からよくチョウが入ってきたものだ。その多くは黒っぽくて地味なヒメジャノメだった。チョウが入って来るとこどもたちが大騒ぎするから、授業はしばし中断となる。こどもたちは、必死になってチョウを外に追い出そうとするが、興奮したこどもたちに集団で追いかけられるチョウは恐慌をきたし、教室内をめちゃくちゃに飛び回る。脱出するには窓は狭すぎる。このため、大捕物はけっこう時間がかかり、先生は苦笑しながら見守るだけ。だからわたしは、この中断がたまらなく好きだった。だから、ヒメジャノメも好きだった。

 なぜ、ヒメジャノメがしばしば教室に入ってくるのか。その理由は簡単。幼虫の食草がイネ科やカヤツリグサ科の各種植物で、田畑の周りや村落の空き地など学校の周りに多く生息しているからだ。なぜ、そのような場所に多いのか。それは、この食草のイネ科やカヤツリグサ科の各種植物が、人手の入った環境に好んで生えているからだ。これらの食草は、深山幽谷には生えないのである。よってヒメジャノメはジャノメチョウの仲間の中で最も普通に見られるチョウになったのである。

 人為的要素の高い環境に発生するというのは、言い換えれば、人間の生活圏の中で生息している、ということだ。これはスズメと同じ現象だ。生物が生息していると人はよく、原生的自然が豊かに保たれている、と思いがちだ。しかし、このように人手の入った環境に“依存”する生物もまたいる。生物を語るとき、皮相な見方をすれば、時として事実を見誤る。

 またヒメジャノメは、花にはほとんど訪れず、樹液、動物の糞、腐った果実、生ごみ…などに集まる。教室に入ってきたり、この食生活…と、どこまでも“人のにおい”のするチョウだ。

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