あおもり昆虫記
オオヒカゲ

 チョウの仲間に、ジャノメチョウという地味なグループがある。みんな薄茶色の羽をしており、決まって目玉模様がある。これを蛇の目に見立てて、その名がついた。

 この仲間の多くは日なたを好まない“日陰者”。オオヒカゲはジャノメチョウの代表格で、なんてったって「大日陰」なのだ。ジャノメチョウの仲間では一番大きく、その飛んでいる姿は、なかなか迫力がある。

 こどものとき昆虫採集のため雑木林に行くとごくたまに、飛んでいるオオヒカゲに会うことができた。悠然と飛ぶ姿は、こどもの目にずいぶん大きく見えたものだ。神秘的に見えた。

 しかし、どこにでもいるチョウではないため、こどものときに見て以来、ずっと巡り会えないでいた。長い間会えないでいると、頭の中でオオヒカゲはどんどん、どんどん大きくなっていった。イメージが増幅されていったのだ。そして、わたしの中でオオヒカゲに対する神秘性がますます強くなっていった。

 再び見たのは、こどものとき最後に見てから約30年たってからのことだった。その年は不思議なことに、十和田市、蟹田町、平内町と立て続けに3カ所で見ることができた。もっと平均的に見られたらよいのに、と思うが、まあ、そんなものかもしれない。

 約30年ぶりにオオヒカゲを見たときは、さすがに感激した。巨大なオオヒカゲが雑木林の中をふわふわ飛んでいるのを見たら、思わず胸がどきどきした。膨らんでいたイメージよりはずっと小さかったが、風格すら感じた。

 ところが、悠然と飛んでいたときは“森の主”のような感じだったが、わたしの存在を認め危険を察知したら、飛び方は急変、オオヒカゲのイメージは変わった。わたしから逃れようと、薮の低い所を猛スピードで飛んで行く。あの大きなチョウがよくもまあ、あんなに器用に薮の中を飛べるものだ、と感心してしまうほどの巧みさ。おまけに、羽に傷をつけずに薮をくぐり抜けるからすごい。茫洋とした外見にかかわらず、なかなかの運動神経の持ち主。“森の王者”というより“障害物競走の王者”といった雰囲気のチョウだ。

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ジャノメチョウの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

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