あおもり昆虫記
ジャノメチョウ

 1986年の8月、わたしは今別町の高野崎に出掛けた。お盆が過ぎたころである。わたしはこどものころから磯遊びが好きで、潮だまり(タイド・プール)を見ると、いてもたってもいられなくなる。小さな魚、カニ、イソギンチャク、貝…天然の水族館の世界がそこにある。時間がたつのも忘れて磯遊びをしたものだった。おとなになっても、その心は変わっていない。

 同年の前後数年、わたしは高野崎に入れ込んで何回も通った。ここの磯が大好きだったからだ。景色はもちろん、水がきれいだし、生き物たちが生き生きしている。友人と来たり、こどもを連れて来たり…童心にかえって磯遊びをしたものだった。

 そのとき、しばしば見かけたのがジャノメチョウだった。が、いずれもカメラを持っておらず、悠々と飛ぶジャノメチョウをただ見つめるしかなかった。それを何回も繰り返したため、マヌケなわたしもさすがに学習、今度はジャノメチョウ撮影目的で高野崎に足を運んだのだった。

 高野崎は寒かった。しかし、風は全く無かった。予想通りジャノメチョウはいた。当然だ。学習の結果、間違いなくいる、と分析して来たのだから。寒いためジャノメチョウの動きは鈍く、のんびり飛んでいた。わたしは風に邪魔されることなくチョウにレンズを向けることができた。高野崎はいつ来ても風が強い。この無風状態は奇跡的だった。

 焦げ茶一色の地味な羽。そして、神秘的な青色の輝きを見せるジャノメ(蛇の目)模様。地色が地味ゆえに、この小さな目玉模様は、実際よりも光彩を放っているように見えた。

 翌日、社内で上司に呼びとめられ、こう言われた。「きのう今別に行っただろう? カメラ持って腹這いになり、何していたの」。どこに人の目があるのか、分からない。

 ジャノメチョウは子供のころの記憶では、明るい草原にいるチョウのイメージだった。実際、七戸町や青森市雲谷の草原で見られる。しかし最近は、海岸で見ることが多い。忘れられないのは1982年、白神山地取材の帰り、青森・秋田県境のドライブインで休んでいた時のこと。紺碧の日本海をバックにこのチョウが飛んでいた。超現実的な光景に心を奪われ、食事を忘れてチョウを目で追い続けた。その光景は、いまも鮮やかによみがえる。

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