あおもり昆虫記
イラガ

 冬。葉を落とした雑木林は、いかにも寒々とした印象を人に与える。だが、珍しくお日さまが出た日、雑木林に足を踏み入れてみよう。モズの“はやにえ”、蛹が透かし網で包まれた大型のガ・クスサンのまゆ、それに、おなじみのカマキリの卵塊などを見つけることができるだろう。生物たちのほとんどが眠りについている冬だけに、これらは生き生き輝いているように目に映る。小学校時代の冬の晴れた日、わたしは、そのようにして過ごすことが多かった。

 冬の観察でよく目にするのが、イラガのまゆだ。小さな卵形。白地にこげ茶色の縞模様。一度は目にした人も少なくないはずだ。中に蛹が入っており、この密室の中で厳しい冬を乗り切る。カチン、カナンの固い殻。羽化したガがどうやって外に出るのか不思議だった。その仕組みは実に巧妙なものであることが、かなりたってからわかった。イラガの幼虫は、まゆを作る時あらかじめ、まゆの内側に丸い切れ目を入れておく、というのだ。

 そして、まゆの中で羽化した成虫が頭でチョンとその部分を押すと、いとも簡単に蓋があき、小さな穴から成虫がはい出るのである。外から強い力を加えても蓋はあかないが、内側からだと容易にあく−ということを知って、わたしは唸ってしまった。自然は、なんてうまくできているんだろう、と。

 ここ数年、自宅の庭にイラガがすみついているようだ。“ようだ”という曖昧な表現をするのは、幼虫を目にしていないからだ。しかし、庭木が葉を落とす冬になると、枝先にイラガのまゆがくっついているのが目につく。毎年、2〜3個目にする。いったい、幼虫は何を食べているのだろう。知らぬ間にひっそりと繰り返される生の営み。初冬、庭木の枝先にイラガのまゆを見つけると、なんだかうれしくなる。

 イラガの幼虫に思い出がある。小学校6年の時、弘前市の自宅前で、同年輩の近所の子と相撲をとった。たまたまわたしが勝ち、相手は地べたにころんだ。と、その子は激しく泣き出した。相撲に負けたくらいで泣くわけがない、といぶかしんだが、間もなく理由がわかった。桜の葉から落ち地面の上をモコモコ歩いていたイラガの幼虫の上に倒れ込み、そのトゲで腕を刺したのだった。これもあとで知ったことだが、イラガの幼虫のトゲに刺されると強烈な痛みを覚えるという。だがわたしには、それを試してみる勇気が無い。

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イラガ〜ボクトウガの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

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