あおもり昆虫記
ヤスマツトビナナフシ

 学生時代、インドネシアのスラウェッシ島(旧名セレベス島)で2カ月間遊んだ。

 「とにかく、海外に行きたい」「南の辺びな所がいいな」と仲間たちと何となく目的地を決め、怪しげな単細胞的探検隊を組織。ちゃっかりと学長から趣意書のサインをもらい、それを持って企業を回り、資金を集めた。良い時代だった。

 “行くこと”そのものが目的だったため、島に着くと、特にやることがなかったが、わたしは昆虫採集に入れ込み、捕虫網を振りまくった。年増の厚化粧のような熱帯蝶をばかすか採集することも快感だったが、なにより感動したのは、本物のナナフシを見たことだった。

 ナナフシは、木の枝に手足が付いたような、やたらめったら細長い虫。南方系の虫で、図鑑でしかお目にかかったことがなかった。それがスラウェッシ島では、ごく普通。木の枝みたいな虫が木の枝に止まっている、という実にややこしい状況だが、目が慣れるといくらでも見つけることが出来た。とげがあるものないもの、緑色のもの、茶色のもの…。長さ20cm以上のナナフシを見たときは「う〜む」とうなるしかなかった。

 怪しげな探検隊の印象がナナフシしかない、というのも情けない話だが、憧れの虫と対面できたこと、その虫がジャイアント馬場的ナマケモノ的スローモーぶりで妙に存在感があったことなど、やっぱり、なんてったってナナフシなのですよ、と言いたい。

 あれから21年後の1992年11月3日。わたしは、平舘村の袴腰岳に登っていた。ふと視線を横に振ったら、ん?ん?ん? ハテナマークが脳みそを駆け巡った。

 ナナフシだ。小さかったが紛れもないナナフシ。おまけに羽まで付いている。トビナナフシだ。南の虫が、なぜ平舘に、なぜこの季節に…。21年ぶりの意外な出会いは、わたしを激しく興奮させた。

 専門家に聞いたら、数は少ないが、青森県にも定住しているとのこと。しかし、11月3日の記録には「青森県という位置を考えると生態的に大変興味深い」とさすがに驚いたようだ。自然は、本当に不思議なことだらけなんだなあ、と改めてつくづく思う。

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ナナフシの仲間 | あおもり昆虫記インデックス

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